点から線へ、網から面へ:ユニクロの出店政策を読み解く

2010.11.25

営業・マーケティング

点から線へ、網から面へ:ユニクロの出店政策を読み解く

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 ユニクロの出店政策が好立地確保に向けて加速している。その意図を考察してみよう。

 先に述べた、謎かけのような飲料の話に戻ろう。
 缶や500mlペットボトルなどの小型容器に入ったタイプの飲料を購入しようと思う時、恐らくあなたは喉の渇きを覚えているはずだ。そんな時は「すぐに手に入れたい」と思うだろう。故に、主たる販売チャネルは、どこにでもある自販機か、いつでも開いているコンビニとなる。場合によっては、自販機を目にした時に喉の渇きに気づいて購入するということもあるはずだ。
 1.5リットルや2リットルの大型容器のタイプの飲料を買おうと思うのは、持ち帰って家や職場にストックして飲むためだろう。その場で飲み干す人はまずいない。故に、スーパーで多くの種類から選んで、できれば安く買いたいと思うだろう。スーパーの特性上、レジで並ぶこともあるため、「すぐ飲みたい」と思う人には向かない。
 オシャレな海外ブランドが作っている希少性もある話題の飲料。限定発売かもしれない。だとすると、「何とか手に入れたい!」と思って、売っているところまで足を運んで購入するだろう。東京なら銀座、大阪なら心斎橋辺りにある百貨店の階上の売り場まで、エレベーターやエスカレーターに乗って買いにいく。

 ユニクロの現在の出店政策は上記の飲料の例と同じだ。日経MJの記事では「営業網の拡大を急ぐ」となっているが、その「網」のかけ方が極めて巧みなのだ。何に対して網をかけているのか。「人(ターゲット)」ではない。「人(ターゲット)」の「ニーズ」に対して網をかけているのである。
 ふと、足りない衣類が欲しいと思う。そんな時には、通勤帰りに立ち寄れる便利な駅ナカに店舗がある。通勤の「ついで買い」として、自販機を見て喉の渇きを思い出すように購入するというニーズも狙っている。多数の商品の中から選んで「まとめ買い」するというニーズに応えるのが、各拠点で展開されている大型店である。さらに、限定商品もある「+J」を扱っているのは心斎橋の旗艦店や銀座店をはじめとする、限定店舗である。その商品が欲しいと思って「目的買い」するファンが足を運ぶ。ブランドと店舗価値を高める狙いである。

 かつて「点」であったユニクロの店舗は、ロードサイドにその数を増やし「線」になり、都心部に出店をするようになって「網」になった。さらに、一律に網をかけるのではなく、ニーズに注目してターゲットがいるところに的確に網を仕掛けるようになったのである。
 さらに忘れてはならないのが、インターネットによる通販、及びモバイルの活用である。ユニクロの様々な先進的なWeb施策は稿を改め論じることとしたいが、ターゲットがどこにいようとも集客できる仕掛けとして機能している。もはや「網」は「面」となっているのである。

 本稿ではあえて“(Product)”と付記しているように、販売チャネル(Place)以外のマーケティングの4Pの要素を強調し、ターゲットとポジショニングに関しても言及している。ユニクロの出店政策は、ターゲティング→ポジショニング→4Pの各要素が顧客のニーズを中心として、きれいに整合しているからこそ、機能するのだという点も見逃せない。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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