日本初、細胞バンクビジネスのミッションとビジョン(2)

2009.08.11

開発秘話

日本初、細胞バンクビジネスのミッションとビジョン(2)

INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社

自分の肌の細胞を使い医療や美容に役立てる。セルバンクすなわち自己細胞バンクは、高度先進医療のシンボル的な企業だ。細胞ビジネスを立ち上げたセルバンク社の問題意識、今後の展開戦略、細胞バンクが拓く医療の可能性などを探る。

第2回
「企業の価値創造機能とは」

■企業の真価は利益の使い方に現れる

「マーケットサイズが小さすぎないか。直感的に思いました。ビーシーエス社の先行きに不安を感じた理由は、やけどというマーケットの規模だったんです」

確かにやけど治療において培養皮膚に対するニーズは明らかにある。ニーズは極めて明確に捉えられているにもかかわらず、競合はほとんど存在しない。その意味では確かにブルーオーシャンなのだが、実は致命的な問題も潜んでいたのだ。

「やけどのマーケットについて試算してみたんです。どうしても培養皮膚に頼らなきゃならない患者さんは意外に少なくて、統計データから推定されるマーケット規模は年間20億円ぐらい、多くて30億ていどだろうというのが結論でした」

それぐらいの市場に対してビーシーエス社は、25億円以上もの資金をつぎ込んでいた。これではいささかバランスが悪い。早晩経営が行き詰まるリスクが高まっていくことは、恐らく予想できたのではないだろうか。

「気持ちは痛いぐらいわかるんですよ。自分の研究がビジネスになる。それによって多くの患者が救われる。これはある意味、研究者の究極の夢なんです。でも、夢だからこそ、徹底的にシビアな目で採算性を見通しておかないとはかなく消えてしまう」

その北條氏が考える企業の本質とは『価値を創造し、その価値と対価を交換すること』これに尽きるという。

そもそも企業は世の中に付加価値を提供するための存在ですね。きちんと価値を提供すれば、それに見合った対価をいただくのはごくごく当たり前のこと。問われるべきは、得た対価をどう使うかでしょう。そこに企業の存在価値が出ると僕は考えています」

まずは本業の足下をしっかりと固め、事業が間違いなく存続するベースを構築する。いくら患者を救うという大義名分があっても、安定した安全な製品つまり培養皮膚を提供し続けることができなければ、最終的には患者が不幸になるのだ。

「キャノンにしても、トヨタもそうですよね。まずは本業でしっかりと利益を確保することに躍起になってるじゃないですか。そうやって基盤をしっかり固めた上で、例えばホンダがアシモを作るようなことは受入られると思います」

ではセルバンク社は、細胞を使った再生医療ビジネスにおいて、どうやって足場を固めたのだろうか。

■お手本はケータイビジネスにあり

「若い頃の細胞を保管しておき、何年か後で使ってもらう。さて、これをどうビジネスとして展開していけばいいのか。考え抜いた末にたどり着いたアイデアが、携帯電話のビジネスモデルでした」

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