ロッテリア返金保証とマクド0円コーヒーに見る選択と集中

2009.07.23

営業・マーケティング

ロッテリア返金保証とマクド0円コーヒーに見る選択と集中

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

立て続けに世間をあっと言わしめた、ロッテリアの「絶妙バーガー返金保証制度」とマクドナルドの「プレミアムローストコーヒー無料配付」。奇策に見えるが、両社の事情を考えると、極めて忠実に商売の基本に則った戦略であることがわかる。

■客単価を増やせ!

0円でシンプルに集客を図るマクドナルドと比べると、ロッテリアの返金保証は少々クセ球だ。ロッテリアは昨年の「絶品バーガー」の成功で、業績回復の兆しが見えたものの、その後、低価格競争に巻き込まれ、競合に顧客が流出するという事態を迎えた。そのため、5月にハンバーガーやドリンクを値下げし自社顧客奪還をかけた。バンズや具材を変更し低価格化を実現。競合、特にマクドナルドのセットメニューより常に安い価格を設定したのだ。
しかし、永遠に低価格路線を続けては、収益的に疲弊してしまう。そこで、今回の勝負をかけたのだ。ロッテリアに過ぎたるともいえる至宝は、絶品バーガーを開発したフランス料理の奇才、嶋原シェフ。その手によって、さらなる傑作、「絶妙バーガー」が誕生した。
「おいしくなければ返金」と、実際に味が問題で返金を求めてくる客はほぼ皆無に近いことはロッテリアはわかっていたはずだ。純粋な言いがかりや愉快犯だけであれば、極めて数少ない。それよりも、世に喧伝される効果が高い。
低価格メニューに加え、そのメニューを目当てに来店する高単価客を集客する。そして、全体としての客単価を向上させる。近年、マクドナルドが最も腐心している、高低単価メニューのバランスをうまく取る「マージンミックス」の手法をロッテリアも取り入れるための切り札が、「絶妙バーガー」であり、さらにそれを加速させるための「返金保証」なのである。

売上げ=客数×客単価。アタリマエすぎて全ての商売に当てはまるではないかとの論もあろう。しかし、ついつい、二兎を追ってしまうのが実情だ。そんな中、返金保証と0円コーヒーの裏の意図は、両社の課題を解決する狙いが絞り込まれていたのである。
奇策を真似るのではなく、その「選択と集中」に学びたい。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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