スターバックスが「らしさ」を失いつつある理由?

2008.12.18

営業・マーケティング

スターバックスが「らしさ」を失いつつある理由?

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

スターバックスの大ファンであるが故に、何度もその問題点を指摘してきた筆者であるが、ある記事で問題の本質に触れることができた気がする。 その記事の要点を元に、再度、ここで警鐘を鳴らしたい。

前文の文末はあえて、「であった」とした。過去形だ。今、スターバックスでこの原稿を書いている。狭い。隣の客の体温が伝わってくる程の席の詰め込み方だ。かつての各店に置かれていたソファーなど跡形もない。たまにソファーのある店も見かけるが、数が少なくなり、そこに座れたためしはない。安らげない。下手をすると、かつて商標をめぐって訴訟問題になった、模倣的存在であるエクセルシオールカフェの方がゆったりしている店も多い。

商品を構成する価値構造において、「付随機能」は、それがなくとも「中核価値」に影響は及ぼさない。この場合の中核価値とは美味しく、様々なバリエーションが楽しめる、適正な中価格帯のコーヒーである。
しかし、「ゆとりの空間」という、スターバックスの「らしさ」を構成する付随機能がどんどん失われ、詰め込み型の店舗ばかりが増えていくのは事実だ。価値構造の一部が失われていっている。その原因はどこにあるのかといつも考えていたが、ある記事でようやくその理由がわかった。」

<スターバックスに“死角”はあるのか?(Business Media 誠)>
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0812/08/news011_2.html

記事によると、ブルー・マーリン・パートナーズの山口揚平氏は以下のように指摘する。
<日本と米国のスターバックスの間には「○○年○○月までに、これだけ出店しなければならない」という契約がある。契約内容を見ると、日本での出店数が目標を下回った場合、不足店舗分のライセンス料を米国のスターバックスに支払う必要がある>という。

つまり、「出店目標ありき」なのであったのだ。「なぜ、こんな場所に?」と思わざるを得ない狭小な場所にも出店がなされるようになった。どう考えても「ゆとりの空間」は確保できない。「いつでもどこでも、スターバックスを楽しめるようにかなぁ?」などとも思っていたのだが、どうにも納得ができないでいたが、ようやく得心がいった。

「米国との契約」は大切かもしれない。しかし、米国においては強気の出店攻勢が裏目に出て、大減益に陥り、店舗も大幅な縮小を余儀なくされている。
日本市場においてはまだまだ成長基調にあるが、前出の記事で山口氏は<出店すればするほど出店ペースは鈍化していく。そこでライセンス料などの契約によって、収益が悪化する可能性が高い>と指摘している。

スターバックスの熱烈なファンとして言いたい。「ゆとりの空間」という付随的であるが「らしさ」を構成する重要な要素を失わないで欲しいと。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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