「バリューライン」で考える、ユニクロとH&Mの戦い

2008.12.11

営業・マーケティング

「バリューライン」で考える、ユニクロとH&Mの戦い

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

昨今の大幅な景気後退局面にあって、なおも好業績を叩き出しているユニクロ。その力の源泉は何なのだろうか。また、銀座、原宿の店舗オープンから長蛇の列を形成したH&M(Hennes & Mauritz:ヘネス・アンド・マウリッツ)は、SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel:製造から小売までの垂直統合型アパレル事業)という同じ業態をとっていることから比較されることが多いが、両社の目指しているものは何なのだろうか。

では、同じSPAという業態で比較されるH&Mはどうなのだろうか。H&Mもバリューラインを超えることによって、消費者からの高い評価を得ているのは間違いない。しかし、その縦軸がユニクロと同じ「品質」ではないことは、店頭で商品を見たり購入したりした人なら誰でもわかるだろう。決して悪口を言うつもりはないが、その素材の品質、縫製の精度はかなり低いといわざるを得ない。質感としてはひとシーズン着られればいいかというレベルだ。仕上げの手間もほとんどかけておらず、通常の店舗であれば考えられないような、シワクチャな状態で商品が並んでいる。
では、なぜにあれほどの人気を誇るのかといえば、「デザイン性」「ファッション性」に他ならない。自社Webサイトでも<H&Mのコレクション製作には、約100のデザイナーがバイヤーとパタンナーと協力して取り組んでいます>と豪語する。また、「コム・デ・ギャルソン」のデザイナー川久保玲氏とのコラボレーションライン「エイチ・アンド・エム コム デ ギャルソン」などの話題の商品も手軽な価格で手に入る。「定番」で勝負するユニクロに対し、同じデザインの増産は決してしないのも特徴だ。

以上のことから考えると、「ユニクロ 対 H&M」という構造は成立しないことがわかる。バリュープロポジション(value proposition=競合に真似できない自社独自の顧客への提供価値)は、ユニクロの「品質」とH&Mの「ファッション性」を同質にとらえることはできない。つまり、各々のブランドを選んでいる顧客は、バリューラインの縦軸である「価値」を全く異なる要素として評価し、「グッドバリュー」もしくは「スーパーバリュー」のポジションにあるブランドとして選択しているのだ。
ユニクロとH&Mは戦っていないのである。

安価で気軽に着られる服を表わす「ファストファッション」という言葉が生まれて数年が経つ。景気の低迷はますます、消費者の低価格志向を促進するだろう。
しかし、ただ安いだけでは支持されない。あくまで「品質」を高めるか。「ファッション性」を目指すか。競合関係にあるか否かは別として、ポジショニングと提供価値の明確さが勝ち残りの必須要件になっていることは間違いない。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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