「苦くないビール・酔っぱらわないビール」に学ぶ

2008.08.16

営業・マーケティング

「苦くないビール・酔っぱらわないビール」に学ぶ

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

飲み会での禁句は「とりあえずビールでいいよね?」だそうだ。それだけビールを飲まない人が増えているということなのだ。

「ビール離れ」と言われて久しい。自他共に求める、ビール党でありビール星人である筆者からすれば、特に夏にビールを飲まずして「人生何が楽しいんだ!」と思わずにいられないのだが、そもそも、人生の楽しみ方が多様化し、「酒を飲まない若者」が増えているというのだから、もはや「ビール離れ」はどうにもならない。

であれば、メーカーが頼るべくは筆者のごとき中年族であろうが、メタボという名の十字架を負わされたこの身では、もはや気楽に「プシュッ」とやるわけにも行かなくなっている。酒量は減らす(できるだけ・・・)。飲む時でも「えーっと、プリン体が少ないから発泡酒で・・・」と涙が出るほど情けない行動も否めない。
故に、先細りの老体となりゆく世代に期待しつづけては共倒れになるので、やはり若者に働きかけることは欠かせないのである。しかし、ビールを飲んでもらおうと思っても、なかなか若い世代は手強そうだ。「プシュッ」「グイーッ」「ぷはぁ~」なぁんて飲まれ方は死滅しつつあることがわかる。

<つまみは“甘いお菓子?” 20代でビール離れ>
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0808/08/news028.html

若者の声としては<「夜はネイルなどをやりたいので酔いたくない」「ビールを買おうとしたが疲れていたのでアイスにした」など飲酒自体への関心も低落傾向」>であるといい、<350ミリリットル1缶を飲むのに30分程度かけたり、甘い菓子をつまみにするなど新たな飲用スタイルも浮かび上がった>と、従来の感覚では考えられないような現象が起きている。うーむ、何という生態。

しかし、それに対してビール会社は生き残りをかけて、若手を起用し、固定概念を打破する製品の開発を行ったのである。
<ビール離れを食い止めろ 大手2社、若手開発の新商品>
http://www.asahi.com/business/update/0815/TKY200808140413.html

アサヒビールは<ショウガから抽出したジンジャーエキスを配合し、「辛さを出しながら爽快(そうかい)感を楽しめるようにした」>といい、キリンは<低炭酸で、アルコール度数も従来のビールより低い4%に抑え、「ふわっと軽やかなうまさにした」>という。ビールの味ではなく、酔っぱらいもしないビールだ。

若者をターゲットとした時気をつけなくてはならないのが、「若者の○○離れ」というフレーズである。
単純に「若者」というセグメントでくくるのではなく、格差問題で収入が少ない人も多いので、なかなか購買層として期待できないという論もある。さらに、携帯電話をはじめとしたコミュニケーションコストの負担が重く、可処分所得がさらに圧迫されていると言われる。一面の真実はある。しかし、そうした論を前に思考停止していたのでは生き残れない。

まず、○○から離れるのは本当に「買えない」からなのか、「買わない」のかを見極める必要がある。「買えない」「買わない」は対象となる製品やサービスによって状況は異なるだろうが、ビールにおいてはメーカーは後者であると判断し、従来の固定観念を崩して新たな製品開発に踏み切ったのだ。

市場のニーズも顧客像も、常に移ろう。変化を捕らえ続け、自らも変わっていくことが生き残りには必要だとこの事例から学べるのではないだろうか。
・・・とはいえ、筆者は今夜も風呂上がりには「プシュッ」っとフタを開け、腰に手を当てて「グイーッ」と飲み干し、「ぷはぁ~」という予定なのだが。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

フォロー フォローして金森 努の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。