タクシー不足と人権問題:なぜ在日だらけだったのか

画像: 映画『月はどっちに出ている』から

2023.12.01

ライフ・ソーシャル

タクシー不足と人権問題:なぜ在日だらけだったのか

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/政治家や著名人が車内で運転手を罵倒した事件が、録音録画されているだけでも数え切れない。運転手を、車という密室で、カネで言うがままに使えるパートタイム奴隷のように扱う日本人の裏の顔を正さなければ、タクシー不足の根本は解決しない。/

自分のその一人とはいえ、私は、外国人以上に、この国の人々のモラルを信じていない。おもてづらはいいが、裏では何をするかわからない。予算は中抜き、工事は手抜き。経営トップですら、陰ではセクハラ、パワハラのオンパレード。保険金詐欺、助成金詐欺のようなことまで組織的に平然とやる。ネットでは匿名で陰湿な誹謗中傷がはびこり、政治家や著名人でさえ、実際に車内で運転手を罵倒した事件が、録音録画されているだけでも数え切れない。仕事の機会に恵まれなかった在日の人々しかやらなかった、そしていまや彼らもやりたがらない運転手を、不景気で荒んだいまの日本の人々が、車という密室で、カネを払う客という立場を与えられて、まともに人間として扱うとは、とうてい思えない。

若いころ、貧乏学生の身の上で、ヨーロッパの町から町へ何度もヒッチハイクをやった。へたな現地語を話すへなちょこの外国人は、長距離ドライブのヒマつぶしとしては、ドライバーとしてもおもしろかったのだろう。田舎で年寄りのよたよた車に乗せてもらったこともあったし、運転手が次の行き先のトラックを紹介してくれたこともあった。ただの観光ではわからないような生活の実情もいろいろ教えてもらって、とても勉強になった。

車は家と同じだ。タクシーでも、深夜は恐いから、身元のはっきりしているテレビ局の伝票客しか乗せない、という運転手さんは少なくなかった。いまの時代、誰でも乗せるオープンなビジネスとしてのライドシェアではなく、むしろ白タクのように、ドライバーの側も対等に客を選んで乗せられるような、もっと繊細なシステムにはできないのだろうか。うまく活用すれば、双方向の語学勉強や国際交流、異業種の情報交換や同郷人のふるさと話など、車は、もっと人間的な出会いの場としての可能性がある。運転する側も人間だ。いくらカネを出すにしても、ドライバーは奴隷ではない。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

フォロー フォローして純丘曜彰 教授博士の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。