高齢者のマナーは、なぜ悪くなったのか。

画像: k1sakaue

2015.02.03

ライフ・ソーシャル

高齢者のマナーは、なぜ悪くなったのか。

川口 雅裕
組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」研究員/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

NPO法人「老いの工学研究所」のHPに掲載したコラムを転載しました。

「最近は、若者よりも高齢者のマナーのほうが悪い」という声は小さくない。確かに電車内、公道、店などでルールやマナーに反した言動をとる高齢者を見かける。先日も、ある新聞が行ったコールセンターに対するアンケートで、対応がやっかいな電話をかけてくる人や、モンスター・カスタマー化した人は60歳以上が多いという結果が出ていた。高齢者人口が増えているのだから、そのような人も増えるのは当たり前なのかもしれないが、昔に比べてマナーの悪い高齢者の割合が高いというのが実感である。

高齢者のマナーが悪くなっているとすれば、その理由は「孤独」ではないかと思う。核家族化の進行や地域のつながりの希薄化によって、高齢者は孤独な環境に置かれるようになった。長寿化でその期間も長くなっている。

孤独が続くと、自分の存在が確認しにくくなる。存在を確認するためには、周囲の耳目を集める必要が出てくる。無視せずに見てもらいたい。たとえ嫌な顔をして見られるのであっても、誰からも見られない、無視されているよりはるかにマシだと感じる。暴走族が爆音を鳴らして走るのも、親や友達から相手にされない子供が思わぬ事件を起こすのも、見てもらうことによって自分の存在を確認しようとしているのだろう。孤独な高齢者も、自らの存在を確認するために、自分の存在を誇示したいという気持ちが働く。だから、居酒屋で自慢話や持論を延々と垂れたり、サービスをしてくれる人に対して居丈高な態度をとったり、無茶な要望をしたりするのではないか。

孤独は、社会性を失わせる。他人と関わることが減ってくると、もともと出来ていた調和的な言動のコツ、守るべき規範を忘れてしまう。よく見知った人達と会うだけだから、相手がどう思うか、周囲からどう見えるかを気にする必要がなく、だんだんと無神経になっていく。せっかく身につけた良い習慣も、環境が変われば簡単に忘れてしまうものだ。そうして、親以外の人々と関わったことがないために社会性を身につけていない幼稚園児が、自分勝手で傍若無人な振る舞いをするのと似たような状態になってしまう。

山登りの格好をした高齢者たちが駅や電車内で集まって、しゃべっているのは、孤独が解消されるという点で、引きこもるよりよっぽど良いと思うが、限度を超えるはしゃぎ方に眉をひそめることも少なくない。お礼や謝罪の言葉を忘れたような人、慎みのない、常識をわきまえない人など、見苦しく感じる高齢者もいる。これらも孤独の結果として社会性を失い、規範も忘れてしまったからではないかと思われる。

高齢者が居丈高になる、誇示する、無神経で自分勝手になるといった傾向は、その孤独が原因かもしれない。昔の高齢者の振る舞いが乱れなかったのは、家族や地域とのつながりがあったからではないか。そう考えれば、高齢者の孤独の解消は、介護・見守り・死に方といった点からだけでなく、高齢者がいかに社会と調和的に暮らすかといった観点からも重要だということになる。

高齢者研究の 「老いの工学研究所」


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川口 雅裕

組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」研究員/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」世話人

組織人事関連(マネジメント・リーダシップ・人材育成・採用)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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