バナナ自動販売機に学ぶ「AIDMA補完計画」

2010.11.19

営業・マーケティング

バナナ自動販売機に学ぶ「AIDMA補完計画」

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 この夏話題になった「バナナ自動販売機」をご存じだろうか。6月から渋谷に、8月には銀座にお目見えした「生のバナナを売っている自動販売機」だ。銀座は終了したものの、渋谷の自販機は今後も設置継続の予定であるという。一体、何が狙いなのだろうか?

 バナナといえば、2008年にTBS系のテレビ番組でオペラ歌手の森久美子が挑戦した「朝食に水とバナナだけを摂る」という「バナナダイエット」を覚えているだろうか。話題が話題を呼び、全国のスーパーの店頭からバナナが軒並み売り切れになる騒動が起こったが、熱しやすく冷めやすいのが日本の消費者。昨今ではどこのスーパーにもバナナはきちんと並んでいる。

 バナナ自動販売機は「バナナブームよ、もう一度」という狙いではないようだ。ブームに頼らずとも、国内の果実消費量が減少傾向にあるのに対し、バナナの消費量は増加傾向にある。輸入果実の中でも数量、金額とも最多であり2005年時点で輸入果実(輸入統計品目表第8 類)では、数量では48.5%、価額では25.3%を占めているという。(神戸税関資料より)。

 「バナナ自動販売機」を展開した株式会社ドールによれば、<忙しくてなかなかスーパーマーケットにも行けず、健康や美容のためにフルーツを取りたくても取れない一人暮らしの学生やビジネスパーソンをはじめとした、あらゆるお客様の声にお応えする日本初のサービスです>と狙いを語っている。(7月22日同社ニュースリリース

 バナナダイエット騒動の後からか、一部のコンビニエンスストアやスターバックスでも1本売りのバナナを目にするようになった。バナナの販路は増えている。しかも、ターゲットとする「一人暮らしの学生やビジネスパーソン」が立ち寄りそうなところに。しかし、そこで目にするものの、筆者は購入している人の姿をあまり見たことがない。「そこにあっても、手に取らない」ということが問題なのだろう。

 「ドール」といえば。「バナナ」だ。実際にはパイナップルやグレープフルーツ、キウイやパパイヤ、マンゴーなど様々な果物を扱っているにも関わらずだ。「バナナはおやつ300円までの中に入りますか~?」という、こどもの頃の憧れ(←かなり年齢がバレる・・・)のブランドだったからというワケだけではない。最近では、テレビでは香取慎吾がアタマや耳、ひげ、指にまでバナナを生やした「Doleマン」に扮したコミカルなCMが忘れられないからという理由も大きい。なのに、若者やビジネスパーソンは買っていないようなのだ。・・・もしかしたら、「若者のバナナ離れ」か?まさか、バナナからも?

 消費者が商品を認知してから購買に至るまでの態度変容を表すモデルに、「AIDMA」がある。注意(Attention)→興味(Interest)→欲求(Desire)→記憶(Memory)→購買行動(Action)である。
 「Doleマン」のCMは面白い。テレビで目にすれば、確実に目が引き寄せられるし、興味も湧く。何度か見れば、しっかり記憶にも残る。しかし、自らとバナナの「接点」がなければ購買(Action)には至らない。故に、スーパーに行かない・いけない人との購買接点として「バナナ自動販売機」は機能する。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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