人は意識的か無意識的かは別として、ある一部の事柄については自ら考えることを放棄し、他者の思考に依存している。この現象を以下では“思考のアウトソーシング”と呼ぶ。思考のアウトソーシングは決して珍しいことではなく、人々が日常的に行っていることだが、いくつかの事例を通じて、そこに内在する問題と留意すべき点について考えてみたい。
か。企業が組織機能の一部をアウトソーシングする場合に起こる問題として、あ
る会社では人事部を丸ごとアウトソーシングしてしまい、評価や昇格が機械的に
行われることで社員のロイヤリティーやモチベーションを大幅に下げてしまった
ということがある。つまり、本来、外出しすべきでない組織の基幹機能をアウト
ソーシングして、組織全体が機能不全に陥りかけたケースといえる。これは個人
の思考でも同じではないだろうか。自社のことを経営者だけに任せていつの間に
か会社が亡くなるなどは、まさにその例といえるだろう。
思考のアウトソーシングは全ての人が行っているものである。しかし、思考の
アウトソーシング先およびアウトソーシングすべき思考を効果的にマネジメント
できるかどうかによって、思考のアウトソーシングはその人にとって善にも悪に
もなり得る。アウトソーシングを効果的に行うことは、他者の思考を有効に活用
することであり、大幅な時間や労力の削減に繋がる。
思考のアウトソーシングの罠(無意識のうちに他者の思考に依存し、他者に振
り回されたり判断を誤ること)に嵌ることなく、他者の思考と自らの思考を最大
限活用できるように、自身の“思考”を一度検証してみてはいかがだろうか
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