好きこそものの上手なれ

2022.12.29

仕事術

好きこそものの上手なれ

大野 亜希子
イデア・ヴィスタ株式会社 代表取締役

顧客獲得は、どの店舗、企業にとっても常に課題です。そしてそのため、さまざまな施策を講じます。マーケティングや商品の開発、広告宣伝等も、重要な施策です。しかし、常に顧客に支持され、愛され続ける店づくりの根本は、自分の仕事を心から楽しんでいるかが、とても重要であるという本質的な内容をお伝えします。店舗に限らず、企業そして、個人の営業成績にも大きな影響を与えます。 ぜひお読みください。


4代目大将の鮨好きは子供のころからもそうでした。
当時、鮨がまだカウンターで食べるものだったころ、「鮨は好きかい?」と何気なく誘った友人を家に連れてきたこともありました。
先代大将が笑顔で、5人連れてきたら10人分の鮨を用意し、お腹いっぱい食べさせてくれる。
しかも笑顔で迎え、文句のひとつも言わなかった3代目。
小・中・高と成長し、食べる量やネタが変わっても、3代目は変わらず笑顔で迎え入れてお腹いっぱいの鮨を握ってくれました。

4代目大将の目には、父である3代目が、まるでヒーローのように映っていました。

しかし、その笑顔の背景には、4代目が知らなかった想像以上の苦悩がありました。
3代目の現役時代は戦後まもなくで、料理を修行する機会に恵まれなかったのです。

鮨屋としては不利な立地であることや時代の変化に加えて、回転寿司登場にともなう客足の遠のきも加わります。
それでもお客様に、ひいては4代目の友人に「最高のエンターテイメント」を提供するために、いつでも笑顔だった。
その父の苦悩とそんな状況ですら笑顔でいる父を見て、曾祖父の代から続く職人業を残したいという強い思いがありました。

それから20年の月日が経ち、世界中から来客があり、予約が取れない状況になった今でもその気持ちは変わらず、また「最高のエンターテイメント」として毎日の仕事に向き合い、仕事前の市場へ行くのに目覚まし時計をかけたことはないと4代目は言います。

「お客様との関わりはもちろん、早朝に市場に行くことも、魚をさばくことも、鮨づくり関わること全てが毎日楽しい」

楽しいと思える仕事ぶりは、お客様へのおもてなしにも表れています。
日頃から大将なりの工夫を凝らし、ひとりひとりにあわせた接客を心がけているのです。

例えばお客様に鮨を出す前には、鮨を楽しませるためのトークをこれでもかと盛り込みます

世間一般でいう、お堅い講釈ではなく、まるで師匠が弟子にやさしく教えるように、ときにユーモアを織り交ぜながら鮨を握る。
こうすることで、お客様はこれから出てくる鮨に対して興味をより強く抱くだけではなく、大将の言葉の深さに圧倒され、いつしか本物のすし職人であることを理解します。

いつもカウンターにいる常連さんも交えながら、たった2時間半の時間でお客様をエンターテインメントの世界に導く
大将の巧みな話術や豊富な知識、それに劣らない職人業を目の当たりにして、彼を認めないお客様は見たことがありません。

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大野 亜希子

イデア・ヴィスタ株式会社 代表取締役

顧客心理の専門家/ /売上向上専門家 /一般社団法人 日本経営士会 経営士補 /日本プロフェッショナル講師協会 認定講師  https://www.idea-vista.info/  現在新人研修受付中 小規模企業様におススメです。 https://sail.hp.peraichi.com/online 売上にお悩みなら、お声がけ下さい。 御社の課題から最適な改善策を提案します。 社員が辞めない仕組み作り 若手が自ら考え動き出す仕組み作り それぞれの役割を明確に強固な仕組み作り 業績向上につながる人材育成 御社の課題にコミットし、成果をお約束します。

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