コーチが選手を潰す

2018.03.05

組織・人材

コーチが選手を潰す

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/少子高齢化と就職氷河期のせいで、いまや部下一人に上司三人。日本の組織は、意志決定機関が現場からの上がりポスト。自分たちの派閥のミスや欠陥を絶対に認めず、組織内での生き残りを賭けて、たがいに争い、相手側の部下を潰し合って、組織全体が泥沼に落ちていく。/

少子高齢化と就職氷河期のせいで、日本の組織のあらゆる場面で奇妙なことが起きている。部下一人に上司三人。それも、上は、カビの生えたような過去の栄光と肩書があるだけで、子飼いの部下の成果に便乗だけして、のさばり続ける。そのうえ、目前の組織縮小を控え、多すぎる上の連中は、派閥としての組織内での生き残りを賭けて、たがいに争い、相手側の部下を潰し合っている。

相撲やレスリングだけではあるまい。ほかのスポーツ、プロはもちろん、アマチュアまで、そんな話がゴロゴロ。ヤクザかカルトのごとく、止めたいなどと言おうものなら、どうなることやら。まして、所属を移りたい、など、絶対に許さない。ヒマを持て余している、干からびたジジイの組織的で陰険な嫉妬ほど、面倒なものはない。

たとえば、大学などもそうだ。研究室はもちろん学会まで、むだに長生きな団塊長老とその子分たちが私物化。カネとポストをオキニの一派だけで廻す。どれだけ多くの優秀な若手が、大学院で潰されたことか。とくに文系では、論文の匿名審査が諸悪の根源。自分の素性がわからないとなったら、ネットの掲示板並みに、むちゃくちゃなコメントをつけて、ろくに実績も無いじいさんたちが引っかき回す。たとえば、海外資料をベースにしたヤクザ映画を総覧する論文で、寅さんはヤクザではない、没! とか(外国人でも知っている主題歌さえも知らないで、審査なんか引き受けるなよ)。マイケル・ポラニーなんか止めて、アダム・スミスの研究で自分の閥の子分になるなら、学振つけてやるよ、とか。こんなことでは、日本の大学の国際的評価が上がらないのも当然。

会社でも、古い業界は、似たようなもの。テレビや新聞、雑誌、書籍がマンガまでダメになるのも、上のセンスが完全に時代遅れだから。しかし、上に嫌われたのでは、編集者や作家としてはやっていけない。それで、それに合わせるのだが、視聴者や読者がそっぽを向いてしまった。新しいものがないではないのだが、そんなものはジジイたちの硬直したコンセンサスを得られず、編集会議を通らない。それで、若手は、ネットその他に活躍の場をシフト。いまやテレビや新聞、雑誌、書籍の方が、ネットのネタの落ち穂拾いで、日々をしのいでいるありさま。

販売でも、仕入れが固着してしまっている百貨店やスーパーが典型。出入りの老朽ブランドとのおっさん同士の付き合いが長く、切るに切れない。現場では、もうムリと声が上がっているのに、それを聞く耳を持たない。それどころか、そんなことを言おうものなら、このリストラ時代、真っ先に自分の方が切り捨てられ、放り出されてしまう。その間にも、世間ではどんどん新しい若々しいブランドが登場し、通販その他、別チャネルでの販売を開拓。それで、百貨店やスーパーそのものが沈没寸前。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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