フリーブックスの閉鎖と電子書籍の明日

画像: photo AC: はむぱん さん

2017.05.05

ライフ・ソーシャル

フリーブックスの閉鎖と電子書籍の明日

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/スマホで、電子書籍、とくにマンガのレガシーが主要商材として再注目されている。そんな中、年会費制の読み放題が、電子書籍図書館として機能し始めている。しかし、こここそが、違法無料サイトのデータ流出元としてもっとも疑わしい。とはいえ、もともと公共の図書館からして、同じようなしくみ。この根本を変えなければ、書籍のデジタル化、レガシーの再生に対応できない。/

 3日夕、話題になりすぎたフリーブックスのサイトが消滅した。昨年末にできて、日本のマンガを中心に数ヶ月で数万冊を抱え、それも無料ということで中高生に人気だった。しかし、類似の「違法」サイトは、ちょっと探せば、あいかわらずネット上にゴロゴロ。私なんかの小難しい本まで、私の知らない間に並んでいたりするので、とてもびっくり。出所はかならずしもはっきりしないが、かなり組織的に、機械的に、手当たり次第のデータ収集が行われているように思う。そうでもないと、私の学術書なんか拾うとは思えない。

 こんな「違法」サイトがはやる第一の原因は、電子書籍の変貌。第二の原因は、DRM(デジタル・ライト・マネジメント、電子著作権管理)の脆弱性。そして、第三の原因は、amazonなどの読み放題。

 電子書籍は、当初、専用端末向けで、とくに日本語は縦書やルビに対応することが必要だった。しかし、白黒の電子書籍だけのために高価な端末を買う人は多くなく、それで、結局、ほとんど市場が広がらないまま。ところが、この数年、爆発的にスマホが普及。あまりに短命なポップミュージックや、おもに個人の情報供給に依存する動画やニュースの配信がネタ切れし始めた一方、眠れる膨大なレガシーを抱えていた電子書籍、とくにマンガが、その主要商材として再注目されている。

 古いコンテンツでも、デジタル化で蘇る。日付更新で著作権が延命される。ところが、この著作権管理、DRMがあまりに脆い。かんたんに外されてコピーがおおっぴらにあちこちアップロードされている。フリーなんとかなども、たてまえは Amazon kindle などと同様に、自分の作品を直接に出版(パブリッシング=公開)できるサイトで、その著作権の有無はアップロードした者の責任とされ、サイト側は、知らん、と突っぱねていたが、一般の人々の「善意」だけで、違法コピーがこれほど集まるとは、とうてい信じがたい。

 では、元データをどこで入手しているのか。第一に疑われるのは、出版関係者。電子書籍フォーマットに合わせるのはけっこう面倒なので、以前(2013年)に問題があった製版プロセスとは別ルートだろう。だが、デジタルデータとなると、第二に、出版社サイドでなくても、販売サイトもあやしい。運営からシステム管理まで、関係者はあまりに多い。だが、それ以上に疑わしいのが、読み放題。Amazonなどでは、会費さえ払えば、電子書籍がいくらでもダウンロードできてしまう。これで大量に落としてDRMを外されたら、どうしようもない。

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純丘曜彰 教授博士 / 大阪芸術大学 哲学教授

我、何を為すや。忙しさに追われ、自分を見失いがちな日々の中で、先哲古典の言を踏まえ、仕事の生活とは何か、多面的に考察していく思索集。ビジネスニュースとしてシェアメディア INSIGHT NOW! に連載され、livedoor や goo などからもネット配信された珠玉の哲学エッセイを一冊に凝縮。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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