土下座卒業という都市伝説

画像: photo AC: AKIZOU さん

2017.03.20

ライフ・ソーシャル

土下座卒業という都市伝説

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/大学の単位は、どこでも、文科省の2/3ルールが徹底されている。半期10回以上の出席が無い、自分で受講放棄した者は、「不合格」以前の「評点対象外」。後から泣きつこうと、成績の付けようがない。にもかかわらず、むちゃな単位要求をすると、その記録がすべて残り、本人はもちろん親まで破滅しかねない。これから学生になる諸君は、初回から試験まで、出席だけはきちんと整えておこう。/

 この業界にいると、例年、この時期、いろいろなウワサがあちこちの大学から聞こえてくる。そのひとつが、土下座卒業。教授に泣きついて無理やり単位をもらって卒業した、とかいう話。


 たいてい語学や教養の単位だ。ふつうは1、2年のうちに取っているべき話なのに、4年にもなってまだ取り残していて、そのくせ、自分ではかってに「卒業見込」と決め込んで就職活動。めでたく内定もいただき、とっととアパートも引き払って、新居への引っ越しを終え、海外へ友達(彼氏彼女?)と卒業旅行。ところが、帰国すると、大学から留年通知。それであわてて親まで出てきて、むちゃくちゃな強訴をやらかす。自分の側の既成事実を言い立てて、いまさら、その責任を取れるのか、とかいう、どこかの学校創設申請者と同じ論法。


 土下座でもなんでもするから、お許しを、などと、言われても、そもそも語学や教養なんて、いまどきたいてい選択だから、ほかの科目で単位を取れば足りるので、最初に登録しても途中で放り出す学生は珍しくもない。だから、受講放棄を謝られる筋合いではないし、謝ったからといって、事実として受講していない以上、では単位をあげよう、などとはならない。


 昔からどこの大学でも2/3ルールというのが学則で決められていて、これが2006年の文科省の通達で、あらてめて厳守徹底された。半期15回の講義のうち、10回以上の出席が無い者は、「不合格」以前の「評点対象外」。つまり、講義登録自体に「Z」が付いて、点数は空欄。ここに「Z」がついている以上、後から点数を水増するとかしないとかの話ではない。大学によっては、4年生の「不合格」には「再試験」の救済制度があるところもあるが、それは、あくまで点数不足の「不合格」だけが対象。出席不足の「評点対象外」は、本人の受講放棄であって、「不合格」ですらないので、再試験も対象外。


 しかし、学生は、就職活動をしていたのだから出席扱いに、とか言い出す。企業が出す書類は、せいぜい「事由証明」であって、それがむしろ講義の欠席を証明してしまっている以上、それで講義を出席扱いになどできるわけがない。カゼやケガの「診断書」を持って来ても、これも学校保健安全法に規定されている「学校感染症」(結核など)でないと無意味。その学校感染症であっても、病欠が出席になるわけではなく、総講義数の方を減らして2/3ルールを適用するので、かえって出席数の縛りが厳しくなる。出席なんて、物理的な事実問題であって、同じ教室にいた他の学生たちも知っている。その事実を教員が温情で恣意的に改竄したりすれば、封筒だ、マクラだ、などと、教員の方があらぬ疑いを掛けられるだけ。とりあうバカは、いない。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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