ネット上のパクリの国際的著作権問題

画像: イタリア最高裁判所:photo AC SALTさん

2015.08.16

経営・マネジメント

ネット上のパクリの国際的著作権問題

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/ネット上の著作権の剽窃に関する管轄国については、国際規定が無く、世界中の裁判所で総当たりになってしまう危険性さえもある。これまでの狭い村社会のなれ合いに染まり切ってしまっている日本の企業やアーティストは、剽窃を疑われることで、考えている以上の桁外れの訴訟の費用と手間、莫大な懲罰的賠償金と、過酷な刑事的厳重罰にさらされてしまうリスクをもっと自覚すべきだ。/

 たんなる素材の場合はさておく。というのも、観光地のスナップ写真などが、被写体そのもののデータ以上の何か(思想や感情)を表現する「著作物」がどうか、議論の余地があるから。(ただし、著作物でないデータも、知的財産権はある。)


 問題なのは、プロやセミプロの著作者の「著作物」をパクった場合。パクる、というのは、専門的に言えば「剽窃(ひょうせつ)」のことで、自分がその「著作物」の著作者であるかのようにふるまい、そのことで第三者から利得を得ること。つまり、「剽窃」は、元著作者からの著作物の窃盗であるだけでなく、著作者であるかのような詐称詐欺として第三者に対する犯罪でもある。(本来の作者を明示するなら、それは「引用」であり、良識の範囲内であれば問題にはならない。)


 そう、剽窃は、犯罪だ。民事事件だけでなく、刑事事件でもある。民事事件として莫大な懲罰的賠償金を課せられるだけでなく、刑事事件として然るべき刑罰に処せられることになる。日本の場合、いまだに前者の著作物の窃盗の面しか認識されていないために、刑事事件としても、元著作者からの親告を構成要件としているが、世界の潮流としては、「善意」(知らなかった、剽窃者を信じてしまった)の第三者が、さらに剽窃者の詐称に騙される人々を社会的に増やし、元著作者の損害を無限に拡大していってしまう危険性があるために、非親告の即時起訴化(だれでも告発でき、すぐに刑事事件に)の方向に向かっている。


 だが、これにインターネット、つまり、国際的な情報空間が絡むと、とても面倒なことになる。一般に事件は発生した国で争われる。しかし、ネットを通じて知りうる以上、「現地」がどこなのか、不明確なのだ。たとえばスペインに事務所があるフランス人著作者が著作物を米国のサイト(在米サーバー)にアップロードして、日本人がブラジルに旅行中に剽窃し、中国で公表した場合、裁判国がどこになるのか、どの国が管轄権を持つのか、現在の国際法体系では明確な規定が無い。法律家のコンセンサスも無い。おまけに著作権法が世界統一されていないために、どこの国で裁判をするかによって、原告被告に有利不利の差が大きく生じる。(概して、日本法がもっとも剽窃に緩く、大陸フランス法の系がもっとも知的財産権に厳しい。ときにはA国で裁判するが、法律はB国の体系を用いる、などという珍妙なこともある。)


 国によって著作権法そのものが異なる、ということからもわかるように、どの国で、どのような裁判をするか、によって、勝敗は大きく変わってくる。つまり、法律的に「剽窃」であるか否かは、法体系と裁判の進め方に相対的に依存する。結果は地震なみに予測困難、というのが、著作権法の現実。世界中に進出している企業のものであれば、すべての国で著作権裁判が総当たりになってしまう危険性すらある。だから、巻き込まれ、争うこと自体が、無謀だ。ここにおいては、事前にトラブルを予防することが最大最善の戦略であり、また、トラブルが生じたら、他国に飛び火しないよう早期和解を探るのが鉄則。しかし、それでも、知的財産権がらみの政治的な理由で、見せしめ的に刑事起訴されることもありうる。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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