売りつけたくない君へ(2)/アポが全然取れないんです。

2015.07.20

営業・マーケティング

売りつけたくない君へ(2)/アポが全然取れないんです。

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

法人営業の基本をストーリー形式でわかりやすく解説していきます。通信会社の法人営業をケースとしていますが、ベースの部分はある程度広い範囲で適用可能だと思います。「売りつけたくない」とつい口走ってしまう人、自分が売れない理由が知りたい人、売れるようになりたい人、必見です。

 カラオケで絶叫してから1か月後。ミュージカルを見てから1ヶ月半後。土曜日の昼。新宿。

 またしても、待ち合わせに彼女は遅れてきた。

 紀伊國屋書店の前で待ち合わせたのだが、時間になっても彼女は現れない。アイフォンを見ると、LINEのメッセージ通知が表示されていた。見ると、「ちょっと遅れます。」とある。そして、クマが謝っているスタンプが送られてきた。普段も遅刻しているのだろうか?いや、さすがにそれはないよな・・・。ないと思いつつも、少し不安になってきた。時間を守れない営業マンはやっぱり厳しいかもしれない・・・。

「こーんにーちわー。ごめんなさい。ちょっと道が混んでて。」

 私の不安をよそに、彼女は相変わらず陽気だ。マイペース過ぎて怖い・・・。少しは相手に合わせることを学んでいるかと期待したが、そんなに都合よくはいかないか・・・。

「いいよ。別に。飯でも食う?」

「あ、わたし、タイ料理が食べたいんです。サブナードに行きましょう。美味しいタイ料理があるんです。」

 サブナードに来たのは学生の時以来だろうか・・・。西武線方面につながる妙に明るい地下街。女子向けの服屋さんや靴屋さんに下着屋さん、カフェなどが並んでいる。

 少し怪しげな表情の仏像が店頭にあるタイ料理店に到着。彼女は店内に入ると、あっさりと上座に座り、「ここ、美味しいんですよ。」と微笑んだ。

 彼女がトムヤンクン2,3人前とサラダ2人前を頼んだ。

「シェアしましょう。美味しいんです。これ」

 俺のメニューまで自動的に決められている。なんという強引さだ。しかも支払いはどう考えても俺だ・・・。俺が新入社員の頃は目上の人よりも先に注文してはいけなかったもんだが、今時は違うんだろうか?営業で、そういう指導は受けたりしないのかな・・・。リードしていると言えばしているんだけど・・・。

「で、どうなの?」

「え、何がですか?」

「君の営業成績。」

 単刀直入に聞いたからか、彼女の顔から笑顔が普通に消えた。というか、この大げさな反応は何なのだろう。いつもそのための打ち合わせをしているのだろうに・・・。言いたくないことは忘れたふりというやつだろうか・・・。

「アポが・・・、あんまり取れないです。」

「アポが取れないんだ。」

「はい。この前、先生とお話してから、会社に行くことや、商談をすることは、すごく気が楽になったんですが、アポがあんまり取れなくて、困ってます。」

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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