ポジティヴ主義の詐術

2015.06.28

ライフ・ソーシャル

ポジティヴ主義の詐術

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/努力すれば努力するだけ、いいように人に搾取される。いくらがんばったって、その道は出口には繋がっていない。とりあえず生き残っていくには、臥薪嘗胆、のらりくらりと我慢が肝心。/

 あれを買うべきだ、ここへ行くべきだ、行政のムダを削減すべきだ、世界の平和に貢献すべきだ、ポジティヴに生きるべきだ、等々、なんとなくもっともらしい。しかし、古代ローマ時代にも、我田引水、党利党略の宣伝と演説が蔓延。


 そんな中で安心哲学が出てくる。最初が懐疑主義。人の言っていることなんか信用しない。そもそも人のことなんか信用しない。得だ損だ、善だ悪だ、と喧しいが、そんなに得、そんなに善なら、まずはあんたが黙って一人でやってりゃよかろうに。健康にいい、と言われ、その後に発売禁止になったものがどれだけあろうか。短期的に得でも、いつかとんでもない損になるものなんか、おっかなくて手を出せるものか。よくわからない時代に身を守るには、よくわからない話には乗らないのが一番。


 ついで出てきたのが快楽主義。あえて積極的に快楽を求める、というのではない。むしろ、自分の得になること以外は、まったくやらない。世界のために、とか、社会のために、とか、体のいい話は、たいていうさんくさい。とくに昨今、少子化で、どこもかしこも、タダで便利に使えるバカな子分や人手が欲しくて仕方がない。自分でやらないヤツらに限って、口先ばかりできれいごとを言う。おまけに、ヤツらは人の肩車を踏み台にして、もっと高いところを目指し、さっさと逃げ出す。利用するだけ利用したら、人を紙くずのように捨てる。だったら、こっちも最初から、よほど確実に自分が得になるのでもなければ、そんなヤツらには関わらない方がいい。


 そして禁欲主義。これも、べつにムリに我慢するのでもない。現状で満足。それだけきちんと守って、それ以上のことは望まない。そんなのは向上心が無い、なんて言われたって、いまの時代、ジタバタしたところで上など望みようもない。人口が半減するというのに、経済がこれ以上に発展するわけもないし、いまの領土だって守りきれるわけがない。絶対にできっこないことでムダに悪あがきする方が、むしろ危険。せいぜいクビにならぬよう、変な濡れ衣を着せられぬよう、最低限のやることだけやって、できるかぎり手を引き、ひっそりと市井に埋もれ、隠れて生きる。


 古代ローマも政争だらけ。かってに皇帝や将軍を僭称する連中が続出し、それらが互いに争って謀略と暗殺が横行。そんな連中に関わり合っても、いいことなんかない。昨今の日本の会社も、似たようなもの。傾き始めると、むちゃくちゃな帳尻合わせで、去るも地獄、残るも地獄。なんとかやりすごして、なるようになるのを待つだけ。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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