上客はマイレージを嫌う

2015.03.12

経営・マネジメント

上客はマイレージを嫌う

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/特典は口先ばかりで、現実の交換はまずできない。まったく詐欺のようだ。企業はマイレージで客を囲い込めると思っているらしいが、ほんとうの上客は、ほんとうにほしいものがあれば、自分で選んで自分で買う。マイレージなんかにうつつを抜かしている企業は、本業の商品そのもので勝負する覚悟に欠けている。/

 マイレージの期限が切れる。御利用はお早めに、なんて、言われたって、あれ、腹が立たないか。相当に貯まっているのに、現実には、まったく使えない。航空券に交換しようと思ったら、その時期は座席設定がない。アップグレードしようと思ったら、コードシェアなのでその機材ではできない。ばらして使おうとすると、1万マイルからで、端数は使えない。いやいや1000マイルでも、と書いてあっても、5000円以上の買い物をしたら、それも1回に1クーポンだけだそうだ。ようするに、まったく使えない。マイルには参る。

 通販でも同じ。あなたのランクはブロンズです、シルバーです、ゴールドです、と、かってに客を格付けしやがる。あといくら買えば、ランクが上がります、だとか、しつこく、うるさい。思いつきみたいに、1000円クーポン券だの、10%オフ特別ナンバーだの、送りつけてきて、何日までに使え、と言ってくるが、おまえのサイト、直販のくせに、Amazonより1000円以上高いじゃないか。楽天やLOHACO、ヨドバシのサイトでも、アウトレット上等、ポイント還元10%くらいは、365日、当たり前だぞ。

 マイレージを使い切ろうとさせることで、もしくは、ランクを上げようとさせることで、追加の購買意欲を刺激したいのだろうが、いまどき、価格ドットコムその他で、簡単に通販の最安値を調べることができる。マイルだの、クーポンだのを使うより、ほぼ確実に、そっちの方がはるかに安い。なぜそういうことになるか、というと、マイレージなんていうややこしい面倒なシステムのせいで、余計な人員を大量に抱え込んでおり、そこに莫大な維持管理コストが発生しているからだ。

 おまけに、心理的にも、購買訴求より、逆効果の方が大きい。最初からくれないものは、なんとも思わないが、こんなにすばらしい特典をあげます、お得ですよ、と、さんざんに吹聴されていながら、いざ交換しようとすると、あげません、ダメですね、ムリです、と言われれば、損した、騙された、詐欺だ、ふざけるな、と思うのが人情というもの。そうでなくても、バカじゃなければ、特典交換をするまえに、ネットで価格検索をするから、なーんだ、直営サイトの方がむちゃくちゃ高いやん、と思って、特典交換はもちろん、特典交換でなくても、二度と直営サイトでは買わない。もっと安いところに行く。

 江戸時代、常連の上得意客だけを厚遇する閉鎖的な商売が横行する中、三井越後屋は、店先(たなさき)で正札(価格勝負)の切売(一反単位ではなく必要な分だけ)を始めて大いに人気を集め、日に千両を売り上げた。航空業界は、座席価格差が大きいので、たしかに国際線では、エコノミーの単発客より、常連上得意客からの収益比率が大きいのだろうが、それだって、昨今、会社の出張で自分のマイレージをせこく貯めるのが楽しみなどという貧乏サラリーマンでもなければ、つまり、本当に余裕のある上客なら、マイレージごときのためだけにサービスの悪い提携エアラインのコードシェア便に乗ったりせず、サービスの良いライバルの直営機の方を選ぶだろう。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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