販管費+50%の壁

2014.11.06

経営・マネジメント

販管費+50%の壁

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/昔と違って、市場が流動化している。そのために、およそ製作費の50%は、営業にかけないといけない。しかし、一人で150%ものことはできない。だからと言って、本業を人まかせにしたら、いったい何が本業なのか。/

 ジョニー・ディップ、最近の映画、やたらメイクが濃いでしょ。いや、ヒュー・ジャックマンやロバート・ダウニーJrでも同じ。後姿だけでもわかるような派手なコスチュームばかり。でも、あれ、じつは本人じゃないから。よほど顔がアップのシーンでもないかぎり、ボディダブルと呼ばれる代役を使っている。もともとは位置や照明の調整、アクションシーンのスタントなどのために、映画でボディダブルが使われるようになった。ところが、今日、ボディダブルをフル活用しないと、スケジュールが間に合わない。

 スケジュールと言っても撮影ではない。営業だ。昔は、映画会社は映画さえ作っていればよかった。あとは各国の配給会社がよろしく営業をやってくれた。ところが、いまは製作費の50%、つまり製作費が1億ドル、100億円なら5000万ドル、50億円を広告宣伝にかけないと映画が当たらない。極東の国のどうでもいい各局のワイドショーの、どうでもいいアナウンサーたちに、どうでもいい独占インタヴューを撮らせないといけない。そういう密着仕事の方こそ、本人でないとまずい。そのせいで、映画本体の方はボディダブルまかせ。

 小説家や漫画家でも同じ。昔は好き勝手に書いて納品すれば、そのまま先生様の玉稿で通った。しかし、昨今、書く前から編集部と細かな打ち合わせをしないといけない。そのうえ、書いた後にもかなりの量の直しが求められる。同じ週単位、月単位だと、仕事が回らない。それで、完全に担当編集者の言いなりになるか、さもなければ、著作者は編集部との調整交渉に50%の能力を割いて、著作の50%の方をアシスタントにやらせるかしか方法がなくなった。

 あなたが街のケーキ屋で、とても良い商品を作っているのに売れないなら、売る努力が足らない。製作にかける努力の、さらに50%増しで売る努力をしないといけない。昔なら、商店街で、そこに店を出していれば顧客はそれを選んでくれた。ところが、市場が大きくなり、顧客は車であちこちへ出かけ、さらには通販で遠くのものまで視野に入れるようになった。その中で生き残るには、あなたもまた、遠くの顧客まで視野にいれて、営業活動をしないといけない。

 しかし、そんな余力はない、そんなことをしたら、商品の製造が追いつかない、と、あなたは言う。でも、話は、映画や小説、漫画と同じ。営業の方は、あなたでないとできない。だから、いまの時代、製造の50%は、アルバイトに任せればいい。なんなら、2店舗にして、それぞれ100%をアルバイトにやらせて、あなたは2店舗の営業に専念してもいい。さらに支店をどんどん増やして、これらの支店の管理も別のだれかにやらせ、あなた自身はチェーン店の広告塔としてタレントになればいい。レストランでも、美容外科でも、みんなどこでもやっている手法じゃないか。いや、小説家や漫画家でも、そうやってプロダクションを大きくしてきたところは少なくないじゃないか。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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