テレビがダメだと言うけれど

2013.05.10

営業・マーケティング

テレビがダメだと言うけれど

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/テレビがつまらなくなったのではなく、テレビがヒマで貧乏な独身男女のために番組を作るのを止めただけ。代わって、昨今は、収入のわりに消費性向が高いファミリー層向けに多くの番組が作られ、テレビ局はみごとに増収増益。見せかけの視聴率はともかく、家族揃っての視聴者数は、きちんと取れている。/

 まあ、たしかに視聴率は落ちている。ところが、実際は意外にも、テレビ局は、のきなみ増収増益。これは、スポンサーとしても、CMを打ったら打っただけのリターンがあるから。ここには、テレビを見ているだけのやつには計り知れないマーケティングの秘密がある。テレビがつまらなくなった、見なくなった、と、うるさい連中は、たいていヒマな貧乏人だ。正直なところ、連中側よりむしろ先にテレビ局側からマーケットとしてディスってハブられただけのこと。

 たとえば、F1(女性24歳~34歳)。バブルの頃の小娘どもは、にわか男女平等とやらでもらった法外な金額の月給とボーナスを、人生の後先も考えず、どうでもいいものにジャカスカと浪費してくれた。だから、F1、とくに独身OL向きにさまざまな番組を作り、化粧品その他のCMを大量に流して、カネを使わせた。だが、いまは貧乏派遣。こいつらのために番組なんか作ったって、どうせカネを持っていないんだから、スポンサーもつかない。M1も同様。正社員ですら、余裕が無い。免許も無いから、スポーツカーなんか絶対に買やしない。デートの予定もないから、見栄を張るもの買わない。というか、買えない。せいぜい連中でペイするのは、波代の安い深夜のアニメの、声優のCDくらい。

 一方、F3M3の中高年(50歳~)の中には、カネがだぶついているやつらがいくらでもいる。午後のサスペンス、夕方の時代劇の再放送なんて、新規の番組制作費もかからず、そりゃおいしい。懐かしいくらいの方が、食いつきがいいし。CMで流せば、ベンツやBMWみたいなとんでもない高級車でも、即金買いしてくれる。BSだの、ケーブルだのでは、高級旅館、海外旅行の番組が目白押し。他に情報源もない連中だから、テレビショッピングで、設置サービスまでする、なんて言ったら、すぐに電話をかけてくる。

 貧乏なF1M1に取って代わって重視されているのが、F2M2。以前は仕事に忙しく、視聴時間が短く、もっともテレビがマーケットとして手薄にしてきたところ。ところが、昨今、家族揃って家で夕飯を食べ、そこそこのリビングで大型テレビを見られるくらいのファミリー層となると、共働きにせよ、かなり手堅い収入がある。軽自動車くらいは買い換えられるし、なんとかやりくりして家を建てよう、家具を新調しよう、子供のものを買ってやろう、と、中高年ほどのカネはないわりに消費性向がかなり高い。そりゃ、スポンサーもCMを打つ。だから、ゴールデンには、子供と家族で見るような漢字の書き取りだの、教科書クイズだのが並ぶことになる。出ているタレントも、みんなママタレ、パパタレ。家族こそが、いまのテレビの中心マーケットだ。家族みんなで揃って見てしまうから、個人個人が別々のテレビで見る独身男女のように、見せかけだけの視聴率は上がったりしないが、じつは、視聴者数そのものは、この手法で確実に維持している。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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