技術封建制(Technology Feudalism)

2013.04.23

IT・WEB

技術封建制(Technology Feudalism)

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/ソフトウェアが時限利用権の販売に切り替わりつつある。これは、技術がパラダイムの天井に近づいて、アップデート価格が品質向上の差分に見合わなくなり、顧客が買い換えなくなったため。だが、業界支配による利用権販売は、実質的には顧客からの収奪ではないのか。/

 技術の貸借を媒介とする保護と忠誠(納税)の契約からなる制度。ソフトウェアやコンテンツが、新しい社会関係の根幹となりつつある。かつて本やレコードは、モノであり、その所有権を買うことができた。それゆえ、その中古もまた、自分のモノとして転売することもできた。しかし、デジタル化によって、自動時限で、もしくは、リモートで即時に、商品を消滅させることが可能となり、メーカー側があくまで商品の所有権を保持し続けるようになりつつある。顧客は、その商品の時限利用権(サービス)を一時的に貸与されているにすぎず、定期納税によって利用権の更新をし続けなければならない。

 たとえば、トランシーバー。かつては、それを買えば、それを永続的に使えた。だが、携帯電話は、毎月の通信費を払い続けなければ、通信を止められてしまう。ソフトウェアに関しても、アップデートは、もともと品質向上の差額負担であったが、もはやメーカー側がかってに打ち出す新標準規格へ追随対応するための定期納税となりつつある。そして、アドビその他、最新ヴァージョンの恒常的クラウド化を名目に、ソフトウェアそのものの販売を中止し、利用権の販売への切り換えが始まった。まして電子書籍などでは、当初から実質的に利用権のみの販売であり、顧客はコンテンツの所有権を持たない。

 メーカー側にも言い分はある。アンチウィルスソフトを典型として、ソフトウェアの場合、開発製造だけでなく、販売後のサポートもまた事業として大きな比重を占めており、その有償化が求められていた。そのうえ、ソフトウェア本体は、もはやパラダイムの天井に近づきつつあり、アップデートの更新費が品質向上の差分に見合わなくなって、顧客が古いヴァージョンのまま使い続けるようになり、新ヴァージョンの売り上げが低迷してきてしまった。それゆえ、経営戦略として、有償事業の主軸を、技術的な開発製造から顧客サポート(封建主義的保護)へシフトさせることになってきたのだ。

 とはいえ、これは経済として健全な傾向ではないのかもしれない。というのも、いったん業界主流となって標準規格を私的に支配してしまえば、あえて新規の技術開発などしなくても、定期的に法外な収入が見込めるからだ。サポートも名ばかりで、実質的には何もせずに、イヤなら使うな、と突っぱねることもできてしまう。こうなると、それは封建的な支配による収奪であって、商品やサービスの適正対価に基づく経済ではない。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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