経済繁栄は教育投資から

2013.04.16

ライフ・ソーシャル

経済繁栄は教育投資から

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/直接浅薄な刺激と興奮で庶民から小銭を毟り取っても、その繁栄は徒花。地理歴史、自然科学、アートやスポーツを幅広く知ってこそ、人生に深みが生まれ、その勉強の努力や苦労を助けるところにこそ、物やサービスが売れ、真の文明的な繁栄がある。/

 いくらカネが溢れても、投資から投資へカネが空回りするだけで、実際の生活の質は豊かにはならない。それは、本を読めない連中、楽器を弾けない連中が、本や楽器をくるくるとたがいに物として転売しているだけのようなもの。江戸時代数百年の繁栄は、教育の普及によって庶民が読書や音曲、趣味、旅行など、生活を楽しむ術そのものを身につけたことによることが大きいことを思い出そう。

 いまの経済では、物を買うことでしか人は社会に参加できない。だが、いくら物を買ったところで、ごちゃごちゃとした物の山に埋もれ、狭い家がさらに狭くなるだけ。いよいよ何もできなくなる。そもそも物は道具にすぎない。それを使って楽しむには、相応の教養や技量がいる。楽器やカメラが典型だが、それを使って楽しめるところまで至るには、相応の教育と練習がいる。そこからきちんと解決しないかぎり、本当の意味での文明の繁栄にはならない。

 車もそうだ。免許が無ければ、車は買っても仕方無い。どこか行ってみたいところが無ければ、免許を取ろうとも思うまい。そして、どこか行ったところで、何だかわからなければ、意味が無い。たとえば、ようやく免許を取って気になる相手を車に乗せ、出雲大社や縁結び大社に連れてきたところで、その相手が、ここってどこ? こんな古くさいところなんか大嫌い、電車で行ける出銭ランドの方がよかったのに、では、すべてムダ。

 昨今、どうせ受験で必要がないから、社会や理科、芸術や体育はまともにやらない、という学校、学生も少なくないようだ。だが、勉強は、受験のためにやるわけではない。地理歴史、自然科学、アートやスポーツを幅広く知らなければ、人生そのものの深みが広がらない。パチンコや風俗、ブランド品やテーマパークのアトラクションで時間とカネを浪費し、宝くじで人生の一発逆転を狙ってみたところで、その末路は知れている。大金を注ぎ込み、チヤホヤされている間だけは、その直接浅薄な刺激と興奮で、哀れで惨めな現実を見ずに済むが、カネの切れ目が縁の切れ目。残るのは、借金の山だけ。

 世の中がつまらない、つまらないと思うやつは、本人がつまらないから。何をやろうと、どこへ行こうと、いくらカネを使おうと、つまらない自分自身からはけっして逃れることはできない。いくら熱心にゲームの中でキャラクターのレベルを上げたところで、そんなことで貴重な人生をムダに過ごしているだけの本人の価値、存在意義は下がる一方。教養というレンズを通して世界の奥行きを知り、自分自身を高めていくことなしには、本当の意味でおもしろい世界に足を踏み入れることなどできない。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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