3Dテレビって何だったの?

2013.02.21

経営・マネジメント

3Dテレビって何だったの?

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/3Dテレビはコンテンツがダメで自滅。シャーP救済のための4kなんかにかまけているヒマがあったら、最新のグラスレス超大型3Dモニタに専念した方が、メディア文化を革命的に変化させる可能性がある。/

 3月末で衛星放送のスカチャン3Dが閉局するそうだ。2010年6月に始まって、3年と持たなかった。となると、3D放送は、WOWOWが月に数本、あとは教育テレビなんかがちびっと流しているだけ。意外にヒストリーチャンネルなんかが3Dドキュメンタリーなんかやっていたりするけど。3Dブルーレイが出ていないわけではないが、不要な通常版との抱き合わせで、やたらムダに高い。

 まあ、最初はちょっとおもしろいけれど、やっていることは、スピルバーグの昔の映画なんかと同じで、前に飛び出るか、奥に素っ飛んでいくか、そればっか。筋と関係無く、そんな遊園地みたいなアクションシーンばっか繰り返されれば、すぐに飽きる。『トランスフォーマー:ダークサイドムーン』なんかだと、垂直方向の落下のようなシーンが出てくるが、これはどうも失敗のようだ。画角を異様な横長にしてしまった以上、水平視界でないと、人間は奥行きが感じられないものらしい。

 本来、デジタル3チャンネル化で3D放送も増えるはずだった。ところが3チャンネル分を同時に使うハイビジョン放送だけが一般化し、旧画質マルチチャンネル放送や3D放送は行われず、かろうじてハイビジョン2分割のサイドバイサイド方式3Dに。しかし、これだと、3Dテレビ以外は、縦に詰まった変形画面が左右に並ぶことになってしまって、まともに視聴できない。だから、3D放送は止めた。放送を止めるから3Dテレビが売れない。売れないから、3D放送しない。典型的な縮小悪循環に陥った。

 1960年にカラー放送が始まったとき、第一に考慮されたのは、白黒テレビでの下位互換性。カラー放送は、そのまま白黒テレビでも見ることができた。それだけではない。白黒テレビでも画面右下に「カラー」と表示されたのだ。こんなのを毎日見せつけられていたら、そりゃ、いつかはカラーで見てみたいと思うだろう。そして、オリンピック。日の丸は赤だ。日本チームのジャケットも赤。『三丁目の夕日 '64』にも出てくるように、カラーテレビは、まだ高価だったにもかかわらず、この年から爆発的に売れ始め、量産効果で価格も下がっていった。

 一方、いまのテレビ屋さんたち。3Dテレビの始末も出来ていないくせに、今度は4kテレビだと。それ、潰れそうなシャーPの過剰生産を買い支える業界横断的救済策だろ。売れる当ても無いのに、そんなバカなことをやったら共倒れになるぞ。ただでさえ、ついこのあいだ、無理やりデジタルテレビを買わされたばかりだ。まったくコンテンツも無いのに、どれだけの人がもう次のに買い換えると思っているのか。技術は、企業の片輪にすぎない。需要という、もう一方の車輪無しに突っ走っても、空回りするだけだ。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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