バカ発見器の次はパクリ発見器

2013.02.10

仕事術

バカ発見器の次はパクリ発見器

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/最新のヴロニプラークシステムを使えば、過去の論文などの盗用が一発で暴き出される。図像や音楽についても、いずれ同様。それも電子図書化で、数十年、数百年も前のパクリまで、すべて世間にさらされることになる。/

 9日、ドイツのメルケル首相の側近シャヴァン教育研究相がクビになった。理由は、33年も前の学位論文における盗用疑惑。彼女だけではない。2011年3月には、グッテンベルクお坊ちゃま国防大臣も、同じ理由で辞めさせられて、米国に逃げてしまっている。この調子で、政治家たちが次々に討ち取られている。

 重要なのは、その発覚の原因だ。ウィキペディアの中心として有名なジミー・ウェールズなんかが剽窃発見器を作っちまったこと。ヴロニプラーク・ウィキと言う。論文をぶち込むと、あらすごい、たちどころに既存の論文や書籍との平行箇所を洗い出し、DNA鑑定のようにバーコードで表示して、盗用疑惑率をはじき出してくれる。まあ、専門の学者なら、こいつ、怪しいな、と思うやつを見かけたことはあるだろうが、よほど個人的な恨みでもなければ、いちいち手間をかけて検証したりしない。だが、このヴロニプラークを使えば、一発でわかる。

 このシステムは、もともとバイロイト大学のアイディアで、現行稼働はドイツ語と英語だけだが、すぐにほとんどすべての言語で使えるようになるだろう。ドイツではとくに社会的地位に学位が必須であるために、まずは著名政治家が狙い撃ちになっているが、遠からず世界中の一般の研究者の論文もすべて精査される。当然、小説やエッセイ、ノンフィクションなども。それも、新規の著作だけではない。スキャナーOCRや電子図書化の発達で、数十年、数百年も昔の盗用が暴き出されることになる。

 これは大変なことだ。先述のように、著名な作家や学者の中にも、前から疑わしいとウワサになっているやつらは少なくない。ただ、業界内での権力のおかげで、つつかれずに済んでいるだけ。しかし、このパクリ発見器は、そんなもん知ったこっちゃない。放り込めば、まったく無慈悲に機械的な結果を出す。たとえ個々の箇所は出典明記のフェアな引用でも、その比率が過半ともなれば、それは原典の方を主とする注釈集にすぎず、オリジナルの研究とは認めがたい、ということになる。著名な人物ほど、大きなスキャンダルになって、その地位と名声から引きずり下ろされ、踏みつけられることになるだろう。

 容易ではないが、じつはこのシステムは、画像や音声、さらには演技や演出のようなものにも応用できる。実際、すでに車のナンバープレートの読み取りは実用化されているし、顔認証システムもかなりの精度になってきている。図表などは、すぐに簡単にひっかかるようになるだろう。マンガや音楽でも、シロウトが似てると思うようなものは、どれくらい似ているか、盗用の疑いをすぐに計算できてしまう。それどころか、だれも似ていると思っていなかったようなものまで、類似性を関連づけていくことができる。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

フォロー フォローして純丘曜彰 教授博士の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。