赤信号は止まれ

2012.11.13

ライフ・ソーシャル

赤信号は止まれ

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/計画と言うと、シロウトはスケジュール表のようなものを考えるが、そんなオール・グリーンライトなどということを前提とする方が間違っている。想定外の赤信号が出るなら、計画の方に根本的な欠陥がある可能性が高い。ムリなリカバリーは、それこそ致命的な大事故を引き起こす。/


 関西に来て最初に聞いた冗談。青は進め、黄色は気をつけて進め、赤は覚悟して進め。だが、まったく冗談にならない。赤信号になろうものなら、赤信号に、なんでや! と文句を吐きながら、そのまま直進してくる。あきらかに右折矢印が出ているのに、何度、強行突破の直進車で恐い思いをしたことか。

 計画学などというものをやっていると、一般の人とは話が合わない。みんな、計画と言うと、スケジュール表のようなものを考えている。プロジェクトでも、旅行でも、そこでは、ひとつの手違いもなく順調に進むことになっている。そして、それしか考えていない。だが、ものごと、最短でうまく行くことは、まずありえない。それは、言わば、すべての信号機がオール・グリーンライトになって、目的地までノンストップで直行できるような状況だ。

 5つのサイコロを振って、全部、ピン目が出ることを期待するのが、そうとうにバカげていることくらい、だれにでもわかるだろう。なのに、計画、というと、それをやる。そればかりか、ピン目が出なかった、と言って、当たり散らす。さらには、かってにごまかして、ピン目が出たことにしてしまおうとする。

 まあ、気持ちはわからないでもない。すべて青信号の状況しか計画として考えていない連中は、たった一つでも途中で赤信号になると、それがそのまま、計画全体の遅れ、ということになってしまう。だから、それを無視して、突っ走ろうとする。困ったことに、これがときにはうまく行ってしまう。だから、そうするのが一番だ、と思い込む。だが、そのうちいつか、命に関わるような大事故を起こす。

 しかし、どこでも一回も赤信号は出ない、という前提で計画していたことの方が間違いだったのだ。自分が間違っていたくせに、当たり散らされても、赤信号も、いい迷惑だろう。そもそも、赤信号は、誰のためにあるのか。赤信号が出ているのは、それなりの理由があるからだ。それが出ているときは、横からくる車にぶつかる危険性が破格に高い。

 もっとまずいのは、赤信号を計画に織り込んでいなかったために、すぐ次のステップで遅れを取り返して、もとの計画通りに戻ろうとムリをすること。そのムリは、もとよりまったく計画していなかった行き当たりばったりのムチャクチャなのだから、いよいよガタガタになる方が当然で、この途中でそれこそ予想外の別の事故を起こす危険性が高い。

 病気でも、赤字でも、契約破談でも、申請却下でも、そこで当たり散らし、ムリを重ね、その赤信号を無かったことにしようとしても、なにも解決しない。それどころか、より悪い危険な状況にみずから飛び込むことでしかない。そもそも、計画外の赤信号に引っかかるということは、その計画そのものがどこか根本的に間違っていた、ということだ。その先で、赤信号どころか、いずれかならずいきなり大事故や大失敗に陥る。ムリに遅れを取り戻すことより、いったん手を引いて、一から見直した方がいい。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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