いまを問えば度量がわかる

2011.10.01

仕事術

いまを問えば度量がわかる

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

事業定義は、個人でも重要だ。しかし、仕事へのコミットメントの深さとスコープの広さは、かならずしも比例しない。気晴らしのほとんどは、スコープの遮断にすぎず、かえって自分を追い込んでしまう。今日と別に明日があるのではなく、ここと別に世界があるのではない。

 いま、何をしている? たとえば、会社で聞いてみよう。ある人いわく、見てのとおりのコピー取りですよ。また別の人は、いやぁ、午後からの会議資料が多くてね。そしてまた別の人は、例のプロジェクトの件、こじれちゃって、もう大変ですよ、と。しかし、じつはこの三人、みなコピー機を操作していた。

 企業では事業定義が最重要とされるが、個人でも同じ。何をやっているのか。やっている行動は同じでも、やっている行為が違うということがありうる。ひとつには、コミットメント(関与)の深さ。コピー取りをしているだけ、という人は、とりあえずコピーがきれいに取れていればいい、そこに何が書いてあるかなんて、知ったこっちゃない。午後からの会議うんぬんというひとは、資料を揃え、とにかく会議に間に合わせれば、なんとか会議を乗り切れば、というところか。そして、最後の人は、問題のプロジェクトのためなら、自分でコピーでも、会議でも、できることはなんでもするつもりだろう。

 とはいえ、前者より後者の方が偉い、などということはない。人それぞれに、地位があり、責任がある。地位も責任もなければ、仕事にコミットメントなどしようがあるまい。小さな仕事しかさせてもらえていないのに、きみたちはいま、世界の平和と幸福と繁栄を築いているのだ、などと上から言い聞かせられても、責任のあるやつが責任を果たすのが当然であって、下の者にまで責任を言うなら、あんたと同じ待遇にしてからにしてくれよ、というのが本音だろう。

 ところが、ここには、もうひとつ、スコープ(視野)の広さ、という別の座標軸もある。コミットメントの深さとスコープの広さは比例すると思われがちだが、そうでもない。見てのとおりのコピー取り、と冷たく言い放す人物が、こんな案件でこじれているような会社、もう長くはもつまい、早く留学資金を貯めて、とっとと辞めてやる、と思っているかもしれない。一方、プロジェクト大事と熱く語る人物が、後先を見失い、こうなったら裏金を使うのもやむをえないか、と考えているかもしれない。

 どうなるかわからない明日のために今日を犠牲にするなんてバカげている、明日は明日の風が吹くさ、オレはいまに生きるぜ、なんていう若いやつは珍しくない。中高年でも、禅だか、キリスト教だかの生半可な聞きかじりを引っ張り出してきて、「いまここ」に全力をつくせ、余計なことは考えるな、なんて説教を垂れるやつもいる。だが、連中は、結局、現状にあぐらをかいているだけ。毎日、目先のはやりすたりで大騒ぎして、人生をやりすごすだけ。結局、けして大成しない。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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