日本経済と暴力団(『週刊エコノミスト』2000号(1992)から)12/17

2011.08.28

経営・マネジメント

日本経済と暴力団(『週刊エコノミスト』2000号(1992)から)12/17

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

『朝まで生テレビ!』(1992)の番組資料としてまとめられ、『週刊エコノミスト』2000号(1992)に論文として掲載されたもの。ヤクザや暴力団についての概要を知るための資料。17分割で再録。著作権は著者が保持。

* 以下は『週刊エコノミスト』1992年掲載当時のままの原稿の再録です。

12)ヤクザの組織的行動力

「ヤクザ」の語源には諸説あるが、おそらくそれは「役座」すなわち臨時職人の組織を意味してきたのだと考えられる。これは、英語で言えば「タスクフォース」に相当する。したがって、彼らは犯罪を目的とするわけではない。ただ、その目的のためには、世間的な意味での犯罪をも辞さない、という強烈な行動力を持っているということである。

ヤクザは、その特徴を強固な組織性に持つ。つまり、先述のように、たんに粗暴なだけの逸脱者は、「チンピラ」ではあっても、本物の「ヤクザ」と呼ぶには足らない。なぜこの組織性が重要であるかと言えば、第一には、この組織性こそが、ヤクザのタスクフォースとしての行動力を生み出す源泉だからである。たとえば、62年には、山口組は博多事件(夜桜銀次殺害事件)に対してわずか二日で三百人以上を現地に動員している。もっとも、その後は軍資金や逮捕者が少なくてすむ単独行動方式が主流になっているが、それでも、資金や武器の調達、情報や移動の世話など、その全国組織(世界組織)による支援を背景とするその計画的な行動力は、たんに粗暴なだけのチンピラとはまったく別の次元にある。

そして、第二に、この組織性は、近代の刑罰体系を完全に無効にしてしまう。つまり、まず、その目的行動が世間的な意味で「犯罪」であるとしても、ヤクザ組織内においては、なんらかの意味での合理性があれば、充分に承認される。そして、その実行後も、逃走が組織的に支援され、簡単には警察に逮捕されない。さらには、ヤクザは江戸時代から「罪代人」制度を持っている。すなわち、組織的な教唆・共謀・共犯であっても、一人が全責任を負って組織には塁を及ぼさない、さらには、まったく犯罪実行者とは別の人間が仕事として刑罰に服する、というものである。もともとヤクザは諸般の事情によって自棄的であることが少なくないが、くわえて、仲間内では「お勤め」がプラスの評価となり、刑務所の中では組織が受入体制を整えており、外でも組織が「留守中」の家族その他の面倒を見てくれ、その上、昨今の刑務所の待遇改善があれば、このような「罪代」も、へたな会社の僻地への単身赴任よりもずっと快適だろう。そして、この制度によって、ヤクザは幹部や精鋭を逮捕されることなく、つねに強力な体制を維持することが可能なのである。

このようにヤクザは、公的刑罰をも超越する強烈な行動力を持っているが、しかし、この行動力は、けっして強盗団などのようにはじめから犯罪を目的としているものではない。その行動力は、「合理的」な目的があってはじめて発揮されるのである。しかし、犯罪をも辞さない歯止めなき「合理性」こそ、ヤクザの最も恐れるべき問題なのである。

13/17 に続く
by Univ-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

フォロー フォローして純丘曜彰 教授博士の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。