日本経済と暴力団(『週刊エコノミスト』2000号(1992)から)11/17

2011.08.28

経営・マネジメント

日本経済と暴力団(『週刊エコノミスト』2000号(1992)から)11/17

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

『朝まで生テレビ!』(1992)の番組資料としてまとめられ、『週刊エコノミスト』2000号(1992)に論文として掲載されたもの。ヤクザや暴力団についての概要を知るための資料。17分割で再録。著作権は著者が保持。

* 以下は『週刊エコノミスト』1992年掲載当時のままの原稿の再録です。

11)「暴力団」という時代錯誤

92年3月1日から「暴力団対策法」が施行された。これは、「暴力団」を指定し、その「暴力的要求行為」や「対立抗争時の事務所の使用」を規制するものである。

もちろん、暴力を取り締まることは万人の賛同するところであろうが、しかし、この法律では公安委員会による「暴力団」「暴力的要求行為」「対立抗争時」などの判断基準に曖昧な点があり、現在の憲法第9条のように「柔軟」な解釈をすれば、一般企業や労働組合や報道機関までも「暴力団」に指定することが理論的には可能であり、戦前の治安維持法以上の危険性がある、との論議もある。さらには、個別行為ではなく、個人や団体を「予防」的に取り締まることは、人権侵害として憲法違反である、との見解もある。いずれにしても、このような議論は法律の専門家にまかして、ここではもっと根底にある日本そのものの問題を論じたい。

この法律は昨91年の5月に成立したが、それに先立つ90年秋、警視庁は企業約3千社(回答約2千社)に「暴力団に関するアンケート」を行った。これによれば、41.2%の企業が「暴力団」の要求を受けた経験があった。これらの企業が相手を「暴力団」と認識した理由は、「1名刺(59.8%)」「2 自称(57.7%)」「3 言動(52.7%)」「4 容姿(33.8%)」である。そして、相手の要求内容は、「1 雑誌購入(47.3%)」「2 寄付賛助(44.9%)」「3 抗議示談(34.8%)」「4 物品購入(28.0%)」「5 広告依頼(22.4%)」であり、その1回の要求金額は、「10万円未満(49.7%)」「10万円以上~100万円未満(28.9%)」「100万円以上(13.7%)」である。そして、このような要求に対して、29.5%の企業が少なくともその一部の支払に応じている。

この結果を冷静に見るならば、やや奇妙にも思えるだろう。名刺を出して組織名を名乗り、雑誌購入等をお願いし、その金額もたかだか10万未満でしかなく、そのうえ、企業の約3割はこれに金を払っているのである。言動や容姿がどのようなものであったかはわからないが、しかし、彼らはおよそ「暴力」などふるってはいないようである。すると、いったいどこが「暴力団」なのだろうか。逆に言えば、これでは、粘り強い営業マンは、まともな売り込みであっても「暴力団」にされ、ましてや、ほんとうにその企業の製品や対応に怒っている一般市民は、みな「暴力団」にされてしまうかのようである。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

フォロー フォローして純丘曜彰 教授博士の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。