半額だの無料だの最近はウソとバカばっか

2011.01.08

経営・マネジメント

半額だの無料だの最近はウソとバカばっか

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/昨今はやりのタダ・ビジネスなどというものは、経済学的には、まったくの空理空論だ。そのツケの方が、はるかに大きい。ところが、バカな経営者は、自分自身でさえコストの見積もりを勘違いし、大勢の顧客まで巻き込んで自滅する。/

 こんなの、メディアリテラシー以前の問題だろう。企業が商売でやっている以上、そして、その円環の中でビジネスが行われている以上、半額だの、無料だの、ということがあるわけがない。

 昨年、『フリー』という本がたいそう売れたが、結局は、昔ながらの三つのモデルに還元される。一つは、三角サービス。獣医は犬を治療するが、カネは犬からではなく、犬の飼い主から得る。行為の依頼者と、行為の対象者がずれている。このために、一見、行為の対象者からすれば、タダであるかのように思われる。しかし、たとえば、視聴者にとってタダのテレビでも、実際は、番組スポンサーの商品の価格に広く薄くその費用が乗せられ、見てもいない番組の分まで、ごたまぜに払わさせられている。ほんとうは、実際に見た番組の視聴料だけを払った方が、はるかに安い。

 もう一つは、寄せ餌サービス。タダだ、半額だ、と、人を集めて、その中から客を釣る。羽布団や健康食品なんかでもよくあるインチキ手法だ。それが、最近は、ネットや携帯に出てきた。これも、タダの部分は、結局、後で高いカネを払わさせられるので、かえって高くつく。100円バーガーにつられて入ってきた客に、うまくセットメニューを売りつけられれば、原価率からしてボロ儲け。もちろん、デパ地下などであれば、味見だけして食い逃げ、という手もないではないが、携帯ゲームの場合、こいつらが、高いカネを払う連中の寄せ餌そのものとなるので、むしろタダで負け組のサクラを雇っているようなものだろう。

 三つ目は、投資償還後の開放。当初は有料だった道路も、その投資金額を回収した後はタダにしてもかまわない。著作権なども、その年限後は、パブリックドメインとして、コピーフリーとなる。しかし、近年は、著作権の年限切れ後も、商標権などの別の方法で妙な連中が私物化してしまうことが多く、簡単にはタダにはならない。まして、道路その他は維持更新に費用がかかり、タダになることなど、永遠の空理空論でしかない。

 結局、どこかにツケが回る。いや、それによって、客の数がまとまれば、その規模効果で、誰も損をしない、などという連中がいるが、それはウソだ。経験効果は、数量が倍になって3割のコストダウンがいいところ。それも、せいぜい大量生産による固定費の均等割にすぎない。だから、鶏肉ばかりの焼き鳥屋なら、正体不明の激安輸入食材の大量まとめ買いでコストダウンも可能だろうが、少量多品種の素材を要する高級レストランとなると、原価比率が高いので、規模効果はまったくない。それどころか、品質の良いものの数量を揃えようとすると、原価はむしろ爆発的に跳ね上がってしまう。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

フォロー フォローして純丘曜彰 教授博士の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。