東京都青少年条例改正の後始末(その2:流通編)

2010.12.12

経営・マネジメント

東京都青少年条例改正の後始末(その2:流通編)

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/いくらでも拡大解釈ができる、ということは、いくらでも縮小解釈ができる、ということだ。それゆえ、今後は、審議会で、いかに個別作品を擁護するが問題の焦点となる。くわえて、18禁エロマンガの年齢確認も、そのプライヴァシー保護の方法を工夫しなくてはならない。だが、はたして、それでコストが合うのか。/

 今回、「表現の自由」を掲げて反対で騒いでいたのが、作り手以上にファンの側だったことは注目に値する。その中心となったのが、エロマンガファン。彼らは、自分たちの嗜好が標的とされたことに対して、それを隠し、マンガ全体への危機であると煽った。それで、それ以外のマンガファンまでが浮き足立った。

 しかし、重要なのは、じつは条例ではなく、同施行規則の方であり、実際の審議会の運営と議論だ。条例が曖昧だ、いくらでも拡大解釈ができる、ということは、逆に言えば、いくらでも縮小解釈ができる、ということでもある。とくに、違法な性交を「不当に賛美し又は誇張することにより」という条文は、表現そのものではなく、表現の意図に踏み入ったものであることにおいて、個別作品で大きな議論となりうる。つまり、昔のように、毛が見えたらダメ、というような形式規定ではなく、表現の正当性が問われる。これは、表現者にとって、表現の意図に正当性さえ認めてもらえるなら、むしろ何でもできる、ということでさえある。しかし、この条文は、一歩間違えば、表現統制ではなく、思想統制にもなりかねない。

 先述のように、実際の青少年健全育成審議会は、最大20名で行われ、作り手側、売り手側から、出版倫理協議会、映画倫理委員会、日本フランチャイズチェーン協会(いわゆるコンビニ)、放送倫理・番組向上機構、新聞社論説委員2名、計6名を送り込むことができる。この人選は、都によるものではなく、各団体からの推薦が基本的にそのまま認められる。だから、ここに、どれだけ強力な擁護者を立てられるか、に、個々の作品の命運がかかっている。(彼らの好きな『ガンダム』風に言えば、組織モビルスーツによる「白兵戦」!)ここでは、ただ座っているだけで高額の委員報酬をもらって帰るような、やる気のない「偉い人」では話にならない。かといって、今回の反対派のように相手を人格攻撃して、一方的に自己主張するだけの「オールドタイプ」のファンもダメだ。出版社側、流通側が、真剣に表現の自由を守ろうと思うのであれば、しっかりと弁が立ち、PTAその他の委員(と、その背後の団体加入者たち)をきっちり説得することのできる最善の人材を送り込むべきだ。そして、東京都で「問題なし」に持ち込めれば、他の道府県も、そのままその審議を参考にすることになる。

 いずれにせよ、いったん都青少年健全育成審議会が18禁とそうでないものをきっちり区分けしてくれたなら、もう後は、中身はおかまいなし。こうなると、これはもはや表現の自由の問題ではなく、むしろ嫌煙権や赤線の問題の系譜に属している。ようするに、18禁ものは、むやみに人前で売るな、見るな、というだけのこと。もちろん、どこぞの大手書店のように、独自に審査して、18禁でなくても販売しない、という経営判断もありうるが,むだに手間がかかるだけだろう。どのみち、一般少年誌のエロ表現は、今後、編集部方針で、一気に消滅するだろうから、もはや問題とはなるまい。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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