大艦巨砲で玉砕撃沈する邦画業界

2010.12.02

営業・マーケティング

大艦巨砲で玉砕撃沈する邦画業界

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/政治的な支援にも関わらず、邦画振興は結果が出ていない。その原因は、製作ノウハウが古い、コストをかけるところがまちがっている、リスクの大きな大作に偏っている、などが挙げられる。そして、アニメーターや映画監督より、ストーリーテラーを養成しなければ、話にならない。/

 政治的なコンテンツビジネス振興はけっこうなことだが、どうもうまく結果に反映されていない。つまり、これでは、ムダ使いの死に金だ。邦画業界の方も、やたら大金をかき集めて、大作を作りたがるが、作品のクォリティとして費用対効果が低すぎる。

 その原因の第一が、製作ノウハウが古いこと。現場での撮影時間をかけ過ぎ。これは、ダイレクトに人件費や機材費となって、ムダに予算を膨らませる。日本では、小津以来、リテイク数十回、などというのが、あたかも完璧主義のこだわりであるかのように賞賛されるが、ようするに、事前の打ち合わせが甘い、準備不足、というだけのこと。スタジオ入りする前に、監督自身がしっかりとイメージを固め、それを役者やスタッフに適格に指示しておけば、そんな事態にはならない。実際、スピルバーグの場合、一本60日で全カットを撮り上げ、あれだけの作品に仕上げている。それ以上の時間をかけ、それ以下のクォリティであるなら、監督や、撮影の段取りを決める第一助監督に才が無い。

 第二に、コストをかけるところが間違っている。昨今、アニメ実写化などの邦画大作では、やたら凝ったCGを山場のスペクタクルシーンにもってくるが、CGだけの死んだシーンはスペクタクルにはならない。世界では、もはやCGは、実写と見まがうリアリティを出すためではなく、CGでしかできないような人形劇的な世界観を表現するために用いられている。もしくは、ただの日常的大道具。黒沢がロケ地の倉庫を撤去させたエピソードがあるが、いまやCGでかんたんに消せる。それどころか、撮影コストを下げるため、移動費用がかかり、天候リスクの生じるロケは極力避け、2D・CGの画き割りセットを画面上に建て込み、スタジオ内のグリーンスクリーン前の演技をサーボカメラで撮ると、簡単安価に3D・CGのできあがり。米国のテレビドラマのほとんどが、いまやこの手法だ。そうでなければ、毎週1時間もののハイクォリティ作品を提供できるわけがない。

 第三に、そもそも日本で大作映画なんか作っているのがどうかしている。米国の場合、世界的な資金調達力と市場配給力があるから、イヴェントムービーと呼ばれるような大作も成り立つ。だが、邦画が国内の映画館で数週間しか上映しないものに法外な大金をかけていたら、毎度、赤字だらけになるのは、当然のことだ。そもそも米国にしても、すでに映画からテレビドラマに主軸を移している。世界のケーブルテレビを考えれば、この方がはるかに市場規模が大きく、収益も安定している。韓国なども、いち早くこのことに気づき、テレビドラマのアジア輸出を強力に進めている。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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