予算の取ったもん勝ちは不正の温床

2010.11.09

経営・マネジメント

予算の取ったもん勝ちは不正の温床

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/競争的予算集中配分とやらで、プロジェクトの仕分けが行われるが、こうなると、予算を取ること自体が自己目的化し、実績化して、成果よりもむしろ予算消化が業務の中心となってしまう。/

 この教授、たった一人で五年間に1億数千万円もの研究予算をみごとに使い切った。数百台ものノートパソコンを、全部、自宅に持ち帰って、電子レンジで加熱したり、冷蔵庫で冷凍したりして耐久性を調べ、その後、みな捨てた、と言う。ところが、製造番号を追跡したら、別の人たちがきちんとユーザー登録している。ようするに、こいつは、大学で買った大量のパソコンを、新古品として売っぱらい、まるまる公金を着服していただけ。

 その一方、ある大学のある研究室は、夜な夜な教授が院生や学生たちを引き連れ、街に繰り出しては、公園のゴミ箱からカップ酒のガラスビンを拾い集めている。予算が無くて、実験用のビーカーが買えないのだ。高額の大型実験機器を使わせてもらうために拠点大学を訪れ、若造どもに面と向かって嫌味を言われている哀れな地方教授もいる。

 どうしてこんな異常なことが起こっているか、というと、近年の競争的予算集中配分というやつだ。集中してしまうなら、配分ではなかろう、と思うのだが、ずるいやつは、いつもうまいことを言う。財政削減で総予算が厳しくなってきたために、研究を仕分けして、将来性のあるものだけに資金を集中させよう、と言うのだが、ようするに、特定の大学、特定の教授たちだけで予算を総取り山分けして、むしろ焼け太ろうという魂胆。その一方、その他の大学のふつうの教員は、日々の研究にも事欠くほど貧窮してしまった。

 もちろん、表向きは、研究者なら、だれでも申請できる。しかし、将来性を問うと言いながら、実際は実績重視ということで、結局は、大大学の老教授が億単位の法外な予算を分捕る。なにしろ、予算を認められることこそ、それ自体が、公的な審査による「実績」なのだ。とにかく多ければ多いほど、偉いことになっている。だから、それほどのカネが実際の研究に必要かどうかなど、問題ではない。そして、獲得実績があれば、次期もまたさらに大きな予算が分捕れる。官公庁の各種調査予算も、みなこんな感じだ。

 常識的に考えれば、しかし、それだけの予算に見合う成果を挙げなければ、次期には予算を打ち切られるのではないか、と思うだろう。ところが、予算を独り占めした時点で、競争相手はもはや根絶やし。そして、すでに予算獲得という「実績」も手に入れた。だから、成果など必要ない。むしろ、今期は予算不足で成果を出せなかったじゃないか、と逆ギレして、次期にはより多くの予算を要求すればいい。いや、これでいいのか。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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