市場にクズを売りつける詐欺仕事

2010.10.15

仕事術

市場にクズを売りつける詐欺仕事

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/常連客の回帰性を作るために、商品の陳腐化や顧客の中毒化を図るというのは、仕事の倫理として根本を間違っている。儲けは必要だが、儲かる以上に大切なことがある。それを忘れれば、それはもはや仕事ではなく、ただの詐欺だ。/

 宗教は、神様、仏様、教祖様がいなければ、私は生きていけません、と思わせ、だから、死ぬまで毎週、拝みに来いよ、と言う。しかし、学校は、違う。卒業させるのが仕事だ。これまで世話にはなったが、もう、あなたなんかいなくても、私はやっていける、と学生に言ってもらえるようにする。慕って遊びに来てくれるのは大いに歓迎だが、いつまでも先生、先生と頼ってばかりいられるようでは、先生ではない。まして、親はそうだろう。子を自立させ、親などいらない、と言われてこそ、親としての勤めを立派に果たしたことになる。やたら実家に帰ってきて泣きつくようでは、子育てとしては失敗だ。

 いや、仕事は一般にそうだ。いつまでも大工が目を離せないような家なら、それは、欠陥住宅。飲食店なら、ほかにもいかがですか、と勧め、いや、もう満腹、とてもおいしかった、と言われてこそ、それで仕事が終わる。医者や弁護士も、きれいに片がついて、もう来なくてよいとなってこそ、仕事をやり遂げたことになる。

 マーケティングで回帰性と言い、常連客を作ることが大切だとされる。とくに、市場が大きくならない時代には、これしか方法がない。だが、回帰性を作り出すために、計画的に陳腐化や中毒化を図るというのは、仕事の倫理として大きく間違っている。

 たとえば、ある日本の自動車メーカーは、徹底的にコストを落とし、買い換えを促すために、「平均」の使用年数以上まで使えてしまう部品は「過剰品質」だと言って、そのギリギリまで耐用年数を削り落とさせる。ほとんどすべての部品が、ほぼ同時に寿命になって、完全廃車できるように品質設計していく。これを、なるほどムダがない、エコロジーだ、などと、言えるだろうか。一方、世界で愛され続けている、ある日本製の実用バイクは、まるでブロックのように部品の組み替えが可能で、壊れたところだけを取り替えれば、永遠に走り続ける。いよいよダメになっても、ダメになったバイクをいくつか集めて、生き残っている部品だけを組み直せば、また一台が再生できる。

 次々と新作を出し、いくつもカバンや時計を売りつける。季節ごとに、今年の流行だといって、服や化粧品を売りつける。それどころか、もともとまったく生活に必要でもないものを、さも必要であるかのように、売りつける。家の引き出しには、すこしも便利ではない便利グッズがゴロゴロ。使ってもいない大型の健康器具が物置を占拠。まして、ダイエット食品だの、健康食品だの、効能が定かでもないにもかかわらず、本人が欲しがるのだから、売りつけてなぜ悪い、と開き直り、痛みや辛さに苦しむ人々から法外な大金を巻き上げている。その原価を聞けば、もはや限りなく詐欺に近い。そのコストのほとんどが、さも効くかのように顧客を洗脳するための莫大な広告宣伝費だ。だが、連中は、安いより、高くして広告を多くした方が、実際、よく売れるのだ、とまで平然と言う。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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