人生に勝ち負けを言うやつは、すでに負け

2010.10.05

仕事術

人生に勝ち負けを言うやつは、すでに負け

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/カネや地位、名声は、あるにこしたことはないようだが、あればあったで、それだけの面倒が伴う。いったん勝負に出れば、負けてもゲームを降りることはできない。それなら、最初から地道に働いて生きるのが一番だと思う。/

 ドイツには、城を持っている一家がいたりする。だが、昔からのホンモノの貴族とは限らない。成金の祖父が借金のカタに没落貴族から奪い取ったなどというニセ名家も多い。しかし、いずれにせよ、およそうらやましいとは思えない。なにしろ維持費がものすごいのだ。ただでさえ、ぼろい。ほっておくと、すぐに石が崩れる。山の上にあって、道も悪い。麓から電気や水道を引くこともできない。壁ばかりが厚く、部屋は狭くて、暗くて、寒い。エレベーターなど論外で、上まで細い回り階段しかない。レストランやホテルでかろうじて稼いでいるが、稼いだだけ、すべて出て行く。売ろうと思っても、いまどき買い手などつかない。まるで未来永劫に鎖で牢獄に縛り付けられた囚人一族。

 マイケル・ジャクソンの若い頃の歌に、『おまえは勝てない』というのがある。おまえは勝てない、引き分けもムリ、ゲームを降りるのもダメ。芸能人や政治家、経営者というと、外目には派手に立ち回っているように見えるが、内情はみなこんな感じ。次から次に、新しいやつが出てきて、その地位を脅かす。入るカネはあっても、立場相応に、出るカネも大きい。高い木の上のアホネコと同じ。上へ、上へと登るのはいいが、枝は細くなる一方。だが、いったん登ってしまうと、自分で降りることもできず、それにしがみついているのが精一杯。ちょっと風が吹けば、どこへ飛んで消えるやら。

 テレビの中では大きな口をたたいていても、番組の始まる直前まで、顔面蒼白、自信喪失。それをプロデューサーが赤ん坊のようになだめすかしているタレントなんて、ざらにいる。控室で食パンを何斤もバカ食いしてゲーゲー吐いているとか、台本も読まずに自分の前髪のドライヤーのかけ方で、毎日、美粧さんとケンカしているとか、躁鬱の振幅がひどくて奇声を上げながらどこかに逃亡してしまったとか、その多くがXXと紙一重だ。

 政治家はカネに汚い、などというイメージがまとわりついているものの、それは昔の話。田舎で代々、世襲でやっていれば、本業の方で余裕もあろうが、ふつうの議員の生活の実情はかなり悲惨だ。数千万の年収があったところで、それで事務所を借り、私設秘書を雇うのだから、個人の可処分所得は零細企業の従業員と大差ない。それも、数年に一度、失業の危機に襲われ、選挙で莫大な支出を強いられる。そして、たとえ落選して無収入になっても、事務所の経費と秘書の給与は、なんとか自弁しなければならない。あれでは、儲け話にふらふらとついて行ってしまう気の迷いもわからぬでもない。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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