意識改革は人事一掃にしかず

2010.09.27

仕事術

意識改革は人事一掃にしかず

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/昨日まで腐敗そのものだった上司たちが、新しいトップとともに、部下たちに意識改革しろなどと言っても、だれも本気にはしない。古いシステムで昇格した管理職こそが病巣。社風を変えようと思うなら、連中を社外に放逐処分することなしには不可能だ。/

 なぜ人は右手で握手するのか。心臓が左にあるから? たぶんウソだ。たとえば、車など、左側通行の国もあれば、右側通行の国もある。重要なのは、その地域、その時代の大勢に逆らうことはできない、ということ。私はもともとは左利きだが、はさみや電話機、カメラに始まって、駅の自動改札からなにから、やたら突っかかる。それで、おのずから両手利きになった。相手がみな右手で握手を求めてくれば、左利きであろうと、右手を差し出す。そればかりか、やがて自分もまた、人に右手で握手を求めるようになる。

 国民国家、株式会社の隆盛から百年。日本の戦後で五十年。その淀みのために、どれほど多くの俊英官公庁、民間名門企業が内外で自滅破綻することか。しかし、その記者会見の様子などを見るに、こんな連中が上層にいたのでは、かくなることもやむをえまいと納得させられる。上司は、自分より仕事ができるというだけですら、その部下を嫌う。まして、自分よりクリーンな部下を推挙したりしない。むしろ自分の不正の隠蔽の手助けをするような走狗ばかりを身辺に侍らし、共犯同罪で縛り付けて、派閥の結束を為す。おれになにかあったときは、おまえらもクビになるぞ。誠心誠意、おれについてこい、と。だから、彼らと握手したことのある者は、すでにみな手に汚れが染みついている。

 組織の沈没が不可避という状況に及んではじめて、外からトップを連れてきてなんとか、という話になるが、しかし、そんなダテめがねのようなものを鼻に乗せても、どうにもならない。その横に居並ぶ部長たち、前に出て盛大な拍手を送っている課長たちこそ病巣なのだから。意識改革を、などと叫んでも、派閥力学と不正隠蔽こそ、自分たちの存立基盤。たとえ組織が沈没しようと、なにもしない。むしろ組織をうまく沈没させて、自分たちのこれまでの悪行三昧をきれいに闇に葬ろうとさえする。旧東独の末期など、まさにこれ。インチキ企業の最期も、証拠隠滅に追われ、深夜や早朝、課長たちが膨大なシュレッダーのゴミの山を自分の車でひそかに運び出し、街々で捨て、野山で焼くことになる。

 社風などというものは、企業のどこかを漂っているのではない。管理職者として実体化しているのだ。『論語』に、直材を歪材の上に載せれば、その重さで下のゆがみもなおるが、その逆では直材さえ曲がる、と言う。すでに傾いた企業に、朱に染まってしまった連中を漂白している余裕はない。従業員の四割、これまでの腐敗システムによって昇格してきた中間管理職まで放逐し、二割を真水の新人で補填しなおすくらいでないと、社風は変らない。要は、改革側が絶対的な大勢になるのでなければならない。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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