企業の寿命と再生

2010.08.18

仕事術

企業の寿命と再生

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/市場そのものが衰退しているのだから、回復などありえない。現状維持にしがみついても、死を待つだけ。本業に専念するか、新事業に転進するか、経営資源の費用対効果を考え、いま、二者択一の英断が求められている。/

 30年近く前、『会社の寿命』という本が現れ、30年という数字をはじき出し、話題となった。はたして、いま、その後のバブルを経て、この30年で跡形無くなった会社もあり、いまも健在な会社もある。

 会社はともかく、業界の寿命は確実にある。市場飽和だ。戦後の焦土から立ち上がってきたこの国の中で、もはや巨大土木工事や新規住宅地開発の余地は多くは無かろう。自動車や電器製品も、買い換え需要くらい。まして、今後、人口は幾何級数的に減少していくのだ。海外に、などと簡単に言うが、現地には現地の人々がいる。この時代に昔の満州進出のような、ボケたことを言うようになったら、いよいよ会社も末期症状だろう。

 先の本が着目したのは、本業比率と平均年齢の2つの指標。本業が7割を越え、年齢が30歳を越えると、滅亡へ向けてポイント・オブ・ノーリターンとなる。だが、今の会社を眺めば、そんなものばかり。高齢者たちが寄り集まり、単一事業の中で散発的なヒット商品を模索して、かろうじて延命を図っている。まさに薬漬けの年寄りの様相。それでいて、一発逆転のV字回復、などいう再生妄想にとりつかれ、若者たちに発破をかける。

 市場そのものが衰退しているのだから、どうやってももはや過去の栄光の回復などありえないことを、まず認識すべきだ。くわえて、平均年齢が30歳を越えているということは、どんな大企業であれ、実体は下請や派遣ばかりで、すでに中小企業並みにまで実働体力が落ちていることを意味する。そのうえ、過去の経験と恩讐の蓄積が裏目に出て、内外の提携も容易ではない。あるのは、実情を知らぬ世間が勘違いして抱いている名声だけ。

 業界の寿命切れが迫る中で、会社には二つの選択肢がある。一つは、あくまでそこで生き延びること。パイは小さくなっても、ゼロにはならない。実際、建設会社の中には聖徳太子の時代から続いているものさえある。酒屋、味噌屋、菓子屋なども、数百年を越えて生き残ってきているところは珍しくない。コーラ屋やハンバーガー屋も、半世紀来、世界を席巻している。ここでは、むしろ本業に特化し、伝統と格式を徹底的に守りつつ、時代の流れをつねにうまく取り入れていく。手代たちを各地に分家分立させることによって、地道に人材の新陳代謝と技術の分散保存を図り、本家分家間の競争で、たゆまぬ努力を続ける。そして、なにより顧客をリピーターとして大切にし、市場をリサイクルする。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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