マヌケが寄るとも知は濃くならぬ

2010.08.11

仕事術

マヌケが寄るとも知は濃くならぬ

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/生産現場の効率の悪さを問題にする会議が、自分たちの意志決定の効率の悪さに気づかないのは、悪い冗談でしかない。ムダな議決権者を排し、デメリットの洗い出しが確実にできるよう、案件ごとに処断水準を振り分けることが大切だ。/

 今日、朝からお集まりいただいたのはほかでもない、我が社のヌキタ工場を閉鎖すべきかどうかという問題だ。調べてみたところ、ツネキ工場では10人で1日1つを生産しているのに対して、ヌキタ工場は20人がかりで1日1つしか出来ない。さて、どうしたものか。こう社長が切り出した後、侃々諤々と議論を重ね、30人もいる取締役会は、夜になっても、たった1つの結論すら出すことができなかった。

 以前、東側のある国で、共産主義支配に対する奇妙な共産主義運動が起き、工場を国家から組合が奪取して自主管理することになった。ここでは、従業員たち全員が参加して、連日延々と経営方針を議論。その間、だれも仕事せず、なにも製造されずじまい。国の民主化とともに、工場も民営化したが、結局、倒産してしまった。

 100人で議論しても、10人で議論しても、結論は1つ。生産性という観点からすれば、会議は人数が多いほどムダだ。もちろん、会議の目的にはいろいろある。本部決定事項の連絡だけのもの。各部所からの近況報告のもの。そして、議決するにせよ、そうでないにせよ、後で文句は言わせない、という、事実上の調印式のようなものもあるだろう。

 この最後のタイプの場合、会議を開く前に、根回しが必要になる。だが、ほとんどたいてい、連中は、会社の方向性どうこうではなく、ただひたすら自分の存在感を誇示ためだけにゴネているのだ。この面倒な意向調整コストは、会議の生産性の悪さの比ではない。半端に文句を言えるやつらを作ってしまったからこそ、ややこしくなった。最初から議決権を与えなければ、調整する必要もなかったはずだ。

 また逆に、おっしゃるとおりです、というだけの連中も不要。5%の塩水1リットルと、5%の塩水1リットルを足しても、5%の塩水が2リットルできるだけ。マヌケが何人集まっても、脳みそは濃くはならない。同じ意見の人々が集まっても、なんの勉強にもならない。やる、と言っているところで、やるメリットを述べるやつは、時間のムダ。賛同者ばかりだと、党派集会としては気勢が上がるが、気勢だけで始めたことなど、気運が変れば、すぐに総崩れになる。

 真に重要なのは、案件のデメリットだ。多くの参加者が多面的に検討することで、実行した場合のデメリットをあらかじめ洗い出す。これによってこそ、先行して対策の手を打つこともできる。また、もしデメリットが巨大であるにもかかわらず、それに対する有効な保障策がどうしても見つけられないなら、やる、という前提そのものを取り消し、今度はすぐに、やらない、ということのデメリットの洗い出しを始めないといけない。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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