等価交換の詐術

2010.08.09

仕事術

等価交換の詐術

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/価格は、世間が相場で決めること。自分にとって、また、相手にとってほんとうに価値のあることとはズレている。そして、そこにこそ経済の妙がある。/

 先生が言う。はい、今日は遠足です。これからバスに乗ります。でも、その前に、給食センターからお昼ご飯の代わりに、くだものの入った袋が配られます。さて、ここで問題。リンゴとミカンとではどっちが大きいか? リンゴ! はい、そうですね。リンゴ1つとミカン1つでは、ミカンの方がちっちゃくて、損な気がします。それで、リンゴ2つとミカン3つで等しい、ということにしましょう。さて、では、リンゴ4つとだったら、ミカンはいくつ? えーと、6つ。そう、そのとおり。給食センターの方の都合で、これから配る袋には、リンゴが4つ入っているものと、ミカンが6つ入っているものがありますが、どちらも等しいのですから、ごちゃごちゃ言わないように。

 さて、袋が配られた。中を見ると、さなちゃんの袋は、リンゴが4つ。まなちゃんの袋は、ミカンが6つ。まあ、先生が言うように、どっちも等しいのだから、これでいいか。ところが、あやちゃんの袋には、リンゴ2つとミカン3つ!

 先生、ずるい! あやちゃんのには、リンゴもミカンも入っている! 先生が言う。はい、し、ず、か、に! さなちゃんとまなちゃん、よく考えてごらん。リンゴ2つとミカン3つで等しいんでしょ、だったら、リンゴ4つでも、ミカン6つでも、リンゴ2つミカン3つでも、どれでも等しいでしょ。ちょっと考えれば、わかるでしょ。

 いや、理屈で考えるからわからなくなるのだ。だれだって、リンゴは4つもいらないし、ミカンも6つはいらない。両方食べれるリンゴ2つミカン3つのセットがいいにきまっている。さなちゃんとまなちゃんは、そのうち、いいことを考えついた。ねえ、リンゴ2つとミカン3つが等しいんでしょ。うん。だったら、私のリンゴ2つと、あなたのミカン3つを取り替えない? あら、不思議。等しいものを交換しただけなのに、どっちもリンゴ2つミカン3つになって、二人とも前より幸せになれた。

 これは、経済学で言う「選好曲線」が曲がっていることから生じる効果だ。モノの価値は、人によって異なる。ミカンを1万個も持っていて、もう食べきれない人からすれば、すこし人に分けてあげても、なにも減らない。むしろ腐ったのを捨てる手間が省けたくらいだ。情報も、よほどカネと手間をかけて手にいれた話でもなければ、人に教えても、やはりなにも減らない。だいいち、人や物、土地の情報など、もともと自分のものではないではないか。まして才能は、人にふるまえばふるまうほど、磨かれて良くなる。才能を披露する機会を与えてくれたことに感謝したくなるくらいだ。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

フォロー フォローして純丘曜彰 教授博士の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。