「戦略」の語源と「勝ち」の定義

2010.07.27

経営・マネジメント

「戦略」の語源と「勝ち」の定義

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/おいおい、けっこういい加減な話がまかりとおっているみたいだなぁ。「戦略」が問題になったのは、ナポレオン戦争がきっかけだ。/

古代ギリシア語で、「ストラトス」の第一義は、宿営。「ストラテーギアー」は、宿営の運営のこと。当然、軍隊の運用の意味を含んでいる。(「ストラテーゴス」は、関係ない。ランダムハウスもあまり当てにはならんよ。)

英語に入ってきたのは、革命時のフランス語から。それまでの傭兵軍は、自給自足であり、「キャンティーン(酒保)」と呼ばれる兵士の家族や武器食料の行商人が軍隊の数倍の規模で付き従っていた。ところが、ナポレオンは、傭兵を廃し、巨大な国民軍を国外にまで動かした。ここにおいて、補給の確保が軍隊運用上の国家的大問題になった。現地占領国から徴発するのがつねだが、ロシアは、それを知って、みずからの街を焼く焦土作戦を採り、遠征してきたフランス軍を壊滅させた。

したがって、「戦略(ストラテジー)」は、たしかに、軍事用語だが、勝つための作戦、というのは、まちがい。軍隊の補充や補給などの「兵站(へいたん、コミッサリアート)」、さらには、軍事物資や生活物資の資源や生産の管理を含む戦争遂行のための運用術のこと。

太平洋戦争において、日本軍は、勝つための「戦術(タクティクス)」しか持たず、補給切れで自滅したのに対し、米国軍は、前線で勝つことよりも、無防備な日本軍の補給線を寸断し、本土の軍事都市や工場都市への戦略爆撃を徹底し、友軍の損害を最小限にとどめて勝利を得た、と言われている。(ちなみに、日本語で「作戦」と訳されているのは「オペレイション」で、ノルマンジー上陸の際の多国籍軍の連携行動のような多方面の同時軍事展開を意味する。)

クラウゼヴィッツを引くなら、戦争は政治の延長にすぎず、政治的なイニシャティヴを取ることこそが、戦争目標としての「勝ち」を意味する。つまり、他社や顧客に振り回されることなく、安定した永続経営ができる状態。負け状態では、つねに周囲の環境に振り回され、場合によっては、働けば働くほど利用されて、自分の首の縄が締まるジリ貧に陥る。

たとえば、市場での絶対優位は、2位3位が連携してもかなわない水準、すなわち、シェア70%。ただし、これを越えると、逆に独占性が強すぎて不安定になる。そこまでいかなくても、通常、およそ40%で、業界1位となる。また、すくなくとも25%をとると、他社連合の可能性を含め、業界で無視できないプレゼンス(存在感)を示すことができるようになる。(「クープマン目標値」を参照せよ。)

/by Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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