あなたこそが最大最悪の元凶

2010.07.19

仕事術

あなたこそが最大最悪の元凶

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/黄色いサングラスをかけていると、世界すべてが黄色く見えてしまいますが、ほんとうに世界が黄色いわけではありません。/

 最近のやつはどいつもこいつも、とか、近ごろはあっちもこっちも、とか、言いたくなったら、それは危ない。というのも、まわりがそんな風になっているのは、まわりをそんな風にしてしまっているあなたがいるからかもしれません。

 十七世紀前半、ヨーロッパでは、新教徒と旧教徒の対立が国際的な三十年戦争にもつれ込んでしまいます。この混乱の時代、フランスの虚弱な文学青年デカルトは、部屋にこもって本を読んでばかり。立派な司法官僚だった父親は、そんな息子を心配し、本なんかよりもっと現実の世界を見ておいで、と、遊学に送り出した。ところが、数年と立たずに、すぐに帰ってきてしまった。それで、どうした、ドイツやイタリアはそんなにつまらなかったのか、と父親が聞くと、いえ、おとうさん、おもしろそうな本がいっぱい買えましたよ、と、デカルトは答えた。

 いまでも、ハワイに行ってもバッグを買い、香港に行ってもバッグを買い、パリに行ってもバッグを買っているOLがいる。出張に行って、札幌でも、大阪でも、福岡でも、飲み屋ではいつもの同じ芋焼酎というオヤジもいる。デカルトも、国に帰ってきて、また引きこもっているうちに気づいた。そうか、どこへ行っても、自分がついてきてしまう。自分は、どんな遠くへ行っても、自分からはけっして離れることができないんだ、と。それで、デカルトは、世界のことよりも、まず自分自身のことの方をよく知って、それをきちんと整理し直そうと考えた。

 あれもつまらない、これもつまらない、と思うなら、それは、あれやこれがつまらないのではなく、あなたがつまらない人なのです。あいつも使えない、こいつも使えない、と思うなら、それは、あいつやこいつが悪いのではなく、あなたこそがだれも人をうまく使えないダメな人なだけです。黄色いサングラスをかけていると、世界すべてが黄色く見えてしまいますが、ほんとうに世界が黄色いわけではありません。

 また、あなたの眼が小さければ、あなたには大物を見ることはできない。針の穴から象を覗き見て、毛の生えた灰色の壁、と評するようなもの。たとえ、よくわからん、と思っても、一呼吸置いて、でも、そういうのも、いいんじゃないか、と言える度量があれば、あなたは象をも腹に飲み込むことができる。

評論家のように、他人や物事にあれこれと文句を言う前に、あなたがそこに行く前の、あなたがそれを見る前の、素のそのものを思い浮かべてみましょう。あなたがその前に現われたことで、それらがうまく行かなくなってしまっているのだとしたら、もういさぎよく身を引くか、さもなければ、うまく行くように、それどころか、自分がいることで、さらによりうまく行くように、自分の方を鍛錬し直しましょう。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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