ERMに組み込みにくい新型インフルエンザ対策 

2009.11.24

経営・マネジメント

ERMに組み込みにくい新型インフルエンザ対策 

荒川 大
株式会社ENNA 代表取締役

財務リスクを考える前に、新型インフルエンザとERMの関係についてまとめてみます。

まず、本コラムを書くにあたり、前提とする考え方があります。

それは、SARSや鳥インフルエンザによるパンデミックが発生した場合には、事業継続性を維持すること自体にあまり意味がないと考えられることです。
もしそのような事態が発生すれば、超法規的措置によって金融システムは凍結され、事業継続よりも生命維持のみに注力することになります。

リーマンショック以降、海外輸出の減少により業績悪化に見舞われている製造業などで考えれば、パンデミックにより海外との交流が封鎖されれば、事業継続の可能性を探るのはかなり困難になります。

この点が、最近のパンデミック対策セミナーの中でも、財務リスクやBCPというキーワードを使っている内容が現実離れしているとされる理由なのです。

ただし鳥インフルエンザでも、豚起因のインフルエンザであっても、被害想定は明確にできませんが「未知の感染症によるリスク」という枠組みの中で、現実的なリスク想定と対策を考えておきたいと思います。

まず初めに、「ERM」について。

上場企業が金融商品取引法に対応するための内部統制体制構築の際に目にする用語ではありますが、COSOではERMを以下のように定義しています。

---
ERMは事業体における取締役会、マネジメント、そのほかのスタッフによって遂行され、事業体全体の戦略策定に適用される1つのプロセスである。
事業体に影響を及ぼす発生可能な事象を特定し、事業体のリスク想定に応じたリスクマネジメントが実施できるように設計され、事業体の目的達成に関して合理的な保証を提供することが目的である。

「Enterprise Risk Management ― Integrated Framework」
---

では、そもそも新型インフルエンザは、このERMの中に取り込むことができる「想定できるリスク」なのかというと、WHOおよび国家レベルでさえ「リスク想定」が有効に働いておらず、そもそも想定するのではなく、現実に都度対処していくという状況になっていますので、一般企業が独自に考える、又は、リスクコンサルティング会社が提供する「リスク想定」に対応した対策構築の実効性には疑問が残ります。

今年の3月までは、鳥インフルエンザが想定されるリスクでしたが、この段階では日本で600万人が死亡する伝染病でしたので、事業継続をどのように行うのかよりも、自分が生き残れるのかが重要でした。

また、感染症による事業継続リスクを想定する場合、SARSや鳥インフルエンザの発症をベースに考えるのであれば、空路も海路も封鎖されますので、輸出入だけではなく、海外からの救援までも難しく、金融システムだけではなく、輸出入を含むサプライチェーンなどのあらゆる交流が一時的に停止されることになることは容易に想像がつきます。そして、国内の感染対策や救援体制は全て自国内で対応しなければならない状況になるでしょう。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

荒川 大

荒川 大

株式会社ENNA 代表取締役

企業実務(総務・人事・法務・社内システム等)におけるコンプライアンス対応について、企業実務者の観点からの業務改善、内部統制対応等の支援を行なっております。

フォロー フォローして荒川 大の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。