『カレーポリス』問題

画像: テレビドラマ『夢をかなえるゾウ』から

2021.05.11

ライフ・ソーシャル

『カレーポリス』問題

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/いま、どこの国も、非常事態にある。気が立っているのも、わからないではない。だが、せっかくの好意関心の高まりを、歪んでいる、などいって潰してしまったのでは、いよいよ心も離れてしまう。/

 DJグループのCandy Foxx(元「レペゼン地球」)が、ミュージックビデオ『Namaste!! CURRY POLICE』5月5日にYoutubeにアップロード。しかし、これに対し、在インド日本国大使館までもがFacebookで「インド文化を歪めたビデオ」「多くのインドの友人たちが日本大使館に苦情を申し入れてきた」(5月8日、原文は英語)と表明。このため、問題のビデオは削除された。

 このビデオのどこが歪みかは、ネイティヴの判断に任せよう。だが、ネットで騒ぐだけならともかく、「インドの友人たち」とやらが日本の公式の大使館にまで苦情を申し入れたとなると、じつはかなり大きな国際問題だ。というのも、このビデオのネタは、もともと、2006年に日本が、海外の「日本食」は日本文化を歪めている、として、海外の日本食を取り締まる「寿司ポリス」を創設しようとしたことのパロディだからであり、この文脈を理解せず、ビデオを削除させる、という形で、ほんとうにインドが海外のインド文化の取り締まりをしてしまったことは、まったくシャレになっていない。

 ちかごろ、背景や文脈を理解せず、断片だけを切り取って、無知で、もしくは、故意に煽るデマゴーグだらけ。Candy Foxxも、3月4日、第3弾の『SUSHI YAKUZA』を公表している。そこですでに、寿司にカレーを掛けるな、ということで、寿司ヤクザvsカレーポリスのカレー寿司抗争が勃発しており、第4弾の『カレーポリス』は、その前日譚として、カレーポリスの世界制覇の野望の始まりを描いている。このシリーズの流れを抜きに第四弾の個々の場面だけを切り抜いてどうこうというのは、文脈を理解した上の論評ではなく、フェアなやり方ではない。

(寿司カレーは、実際に某回転寿司チェーンが寿司飯カレーを出していることの皮肉だろう。)

 そして、そもそも寿司ヤクザからして、上述のように、2006年の農林水産省が創設しようとした「海外日本食レストラン認証制度」に対し、「ワシントンポスト」や「ロサンゼルスタイムス」などの米国有力紙が一斉に反発し、日本の「寿司ポリス」がやってくる、と揶揄したことに端を発している。結局、この計画は断念されたが、その後、2016年には、このアイディアを元にした近未来SFの3D短編アニメ『SUSHI POLICE』全13話としてテレビ放映され、ドイツなど、ヨーロッパでもDVDで発売された。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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