ワニの涙:ウォークスvsチャヴス

2020.03.23

営業・マーケティング

ワニの涙:ウォークスvsチャヴス

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/登場人物たちのキャラクター付けから生活行動、あちこちの陳腐なクリシエ・エピソードの寄せ集め、そしてファッションまで、きっちりC層の生き写しで、その共感を得るようにターゲットオンされている。W層が騒がなければ、それなりにうまくC層に騙し売りおおせたのではないか。/

ところで、企業や老舗は、バブル期以降、安定した戦後の第二世代、第三世代となって、世襲私物化が進み、これに応じて、マスメディアや広告代理店も「人質採用」、つまり、世襲の子弟子女を縁故で正社員に囲い込む。彼らはE層の、それも私立高組ではあるもの、その多くは、E層に追随しようする向上心の強いまともなW層からは相手にされず、むしろ外部の反体制的、反社会的なC層とつながっている。碌な友人のいない(変な友人ばかりいる)某世襲政治家や、その奥方などが典型だろう。どこぞの王族の息子や娘も、そう。

ややこしいことに、2000年代になると、C層の中で、W層はもちろんE層をも突き抜ける経済的な成功者、「セレブ」が少なからず登場する。彼らは、ルサンチマンに凝り固まった声なきC層の代弁者であり、前世紀的なマスビジネスで(C層の中での)絶大な「人気」を誇る。スポーツ選手や芸人、マンガ家やラノベ作家、ラーメン店主、Youtuberなどがそれだ。

しかし、C層は、もとよりトラッドな文化レガシーを持たない。なので、W層の憧れるE層の文化は、まったく理解できない。彼らには寺社仏閣、歴史遺産も、「意味」がわからないので、ボロにしか見えない。それゆえ、これに代替するゼロからでも入り込める偽の神話体型(SWやMU、DBやOPのようなもの)に心酔し、そのフィギュア(神仏像)やグッズ(御札、お守り)を買い集める。アイドルは生き神様で、キャラクターやブランドは、レリキエ並みのパワーアイテム。逆に言うと、W層からすれば、なんでそんなガラクタを、と思うかも知れないが、それらは言わばレヴィ=ストロースの「パンセ・ソヴァージュ」であり、文化レガジーと等価なのかもしれない。

なんとか正社員の家族持ちの身分に踏みとどまっているW層は、Lineのように、友人関係、仕事関係、親戚関係、子供関係、地域関係と、リアルで広範な人脈を多重的に保っている。一方、C層は、全体の総数は多いものの、それぞれの人間関係が単層で、その射程も極端に短い。その狭さを補うために、Twitterの「拡散希望」にすぐに乗せられ、見ず知らずのだれだかわからないやつのつぶやきを無思慮無分別にRTしたがる。また、彼らは、モノを買うことでしか、社会的プレゼンスを示しえない。

広告代理店は、そこにつけこみ、大量生産の偽個人アカウント「ノマド女子」などとしてプラットホームを機械的に作り、広告枠を人質に取っている地上派テレビや出版社・新聞社・週刊誌で「ナウでホットな話題」として採り上げさせ、偽の宗教的「一体感」でC層を誑かし、みずから進んでお布施を払うようにしむける。しかし、真実は、そのつぶやきや話題の向こうに本物の人間は誰もいない。ぜんぶ虚構だ。それも、一ヶ月もしないうちに、消えて無くなり、ゴミになる。C層は、彼らによって、より個人に分断され、より文化的に貧しくなっていく。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

フォロー フォローして純丘曜彰 教授博士の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。