縮小より停止撤退の方がまし?:固定費と損益分岐点の問題

画像: 参考資料:重文 四条河原遊楽図屛風

2020.03.19

経営・マネジメント

縮小より停止撤退の方がまし?:固定費と損益分岐点の問題

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/赤字が出そうなら、前もって、設備などの固定費の方を切り詰め下げて、なんとしても損益分岐点を超える、というところにこそ、興行経営、飲食物販経営のキモがあった。にもかかわらず、出演者も、料理人も、販売人も、その流動性の基本を忘れ、サラリーマンのように硬直した精神しか持たなくなってしまった。/

シロウト考えだと、こういう状況でも、なんとか細々とでもやらないと、と思うかもしれないが、経営学的には、それは悪手。なぜなら、半端に縮小してやっても、絶対に損益分岐点を超えられず、かえって赤字を増やすだけだから。

たとえば、野球。観客が入っても、入らなくても、一日、球場を稼働させるだけで、人件費から空調、照明まで、莫大な費用がかかる。この負担は、半端な数の観客の入場料ていどでは賄えない。つまり、開催すれば、開催しないよりも、絶対的に赤字を累積させていくことがわかりきっている。

中小の飲食店なども同様。いくら仕込みを少なくしても、店を開けておくだけで、けっこうな人件費や光熱費がかかる。どうせもう儲かる見込みが立たないのなら、いっそ早々に閉店してしまった方が、まだ損失が少ない。

現代の経営は、社会の安定を外部不経済で無担保に前提とし、固定費を豪華に拡大しすぎた。設備が巨大すぎて、野球場や遊園地、ショッピングセンターなど、縮小経営しようにも、開けるだけで莫大な費用が必要だ。そして、この巨大な設備を稼働させるために、接客から管理まで、あちこちに大量の人員を配置しなければならず、客が減っても、営業側の人件費を減らすことができない。

とくにセレブと化した選手や役者などのギャラは異常で、先決めのせいで、もっともタチの悪い固定費となっており、経営側は、引くも、進むも、まったく身動きがとれない。本来ならば、実際の客の入りに応じた配分取り決めにしておいて、結果として観客動員が悪いなら悪いなりに、ギャラも少なくなるような変動費にしておくべきだった。

河原にムシロの安直な小屋がけで、景気と人気に応じて大きくも小さくもできる、ギャラは実際に客が入ってからの山分け、というのが、本来の安定興行の基本。設備も人件費も固定化せず、状況が悪ければ一時的に別の兼業商売に切り替えさえする。飲食も、物販も、固定地代を取られるテナントなどにならず、屋台で、営業時間も、メニューや商品の品数も、その日の天気次第で、仕入れから調整できてこそ、本当の水商売。

とにかく、赤字を出さない。赤字が出そうなら、前もって、設備などの固定費の方を切り詰め下げて、なんとしても損益分岐点を超える、というところにこそ、興行経営、飲食物販経営のキモがあった。にもかかわらず、出演者も、料理人も、販売人も、その流動性の基本を忘れ、収入が保証されたサラリーマンのように硬直した精神しか持たなくなってしまった。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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