クラブを忘れたダイナース

2018.12.28

経営・マネジメント

クラブを忘れたダイナース

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/ダイナースはクレジットカード会社ではない。クラブだったはずだ。誰でも入れるような会は、誰も入りたがらない。ダイナースが生き残るためには、いっそ昔どおり、国家資格かMBA以上必須のように、あえて成金富裕層を蹴散らし、社会的信用のある限られたメンバーだけの上質のプレミアムクラブとなるような事業再認識が必要ではないか。/

1960年にできた「日本ダイナースクラブ」も、もともとは芙蓉グループ(富士銀行系=戦前の安田・浅野・大倉など+戦後の森・日産など)の財閥系倶楽部としての色合いが強かった。しかし、2000年、世界のダイナースクラブがすべてまとめてシティバンク系に買収されてからおかしくなり、さらにシティバンク本体が傾くと、15年には放り出されてしまった。それで、いまの日本のは三井住友信託銀行系の傘下となっている。つまり、人的組織を抱えている財閥系を中心とする、ステイタスのある福利厚生倶楽部だったのが、こうして金融系に買収され、オープンなただの成金向けのカード屋に成り下がってしまった。

金融系は、規模、それも金額的な規模を指向する。だが、それは、人的なステイタスクラブであることと両立しえない。現状は、かつての会員たちが長年にわたって築き上げてきた信用とステイタスを、正体不明の成金どもに小分けし安売りして喰い潰しているだけ。京都の不貞外国人旅行者アパートと同じ。会員会費を増やそうとゴルフクラブにスケボー連中を入れてグリーンを荒らすようなもの。それで、信用とステイタスの核である従来の会員たちが抜ければ、ただの怪しい成金向けサラ金カード。いくらカネ余りの時代とはいえ、手堅いアッパーミドルクラスと違って、一発屋の成金富裕層が増えれば、額面上の総額は大きくなっても、リボなどの踏み倒しリスクも巨額になる。どのみち規模で言っても、もはやアメックスやVISA、MASTERSとは並ぶべくもない。このままでいけば、ダイナースは、これらのいずれかに吸収されて、いずれは消滅せざるをえまい。

誰でも買えるような物は、誰も買いたがらない。誰でも入れるような会は、誰も入りたがらない。ダイナースが生き残るためには、いっそ昔どおり、国家資格かMBA以上必須のように、あえて成金富裕層を蹴散らし(資格も学位も無い「名誉賛助会員」はプラチナ限定で会費十倍とか)、社会的信用のある限られたメンバーだけの上質のプレミアムクラブとなるような事業再認識が必要ではないか。いくらカネがあっても、かんたんには入れない会であってこそ、それは格別のステイタスになる。繰り返すが、ダイナースはクレジットカード会社ではない。クラブだったはずだ。


by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka. 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。最近の活動に 純丘先生の1分哲学、『百朝一考:第一巻・第二巻』などがある。)

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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