カルロス・ゴーンとドレフュス事件・パリ暴動:フランス百年のトラウマ

画像: ドレフュス大尉の不名誉除隊

2018.12.01

ライフ・ソーシャル

カルロス・ゴーンとドレフュス事件・パリ暴動:フランス百年のトラウマ

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/フランスの支配層、財界人や政治家は、ゴーンの一件に、ドレフュス事件を重ねて見てしまっている。しかし、フランスの庶民からすれば、ゴーンは「移民」であり、マクロンは「ユダヤの犬」。ただでさえルペンのような極右が勢力を増しているのだから、対応を誤れば、フランス国内にくすぶる反ユダヤ、反移民の感情に火を着けかねない。/

フランスにとって、ユダヤと移民は鬼門だ。ユダヤ系投資銀行(ロスチャイルド)出の大統領マクロンがルノーのトップにつけた移民ゴーンが日本で有罪となれば、フランスの社会情勢が持たない。失業や増税に怒り狂う一般庶民が、愛国心無しに政治から経済、文化まで全面的に支配しているユダヤ系フランス人、仕事を奪って増え続けるアルジェリア系フランス人たちに対し、国内で激烈な攻撃の暴動を起こしかねない。だから、彼らの脳裏に、過去のトラウマが蘇る。

それは、今から百年以上も前のこと。1870年の普仏戦争に敗れ、近代化に不可欠な鉄鋼と石炭の出るアルザス・ロレーヌ地方を失い、フランスは不況にあえぎ続けていた。ここにおいて、ロスチャイルドをはじめとするユダヤ系銀行は、冷徹に、もはや国内には期待ができない、と判断し、フランスの庶民から集めた資金を、東欧の同族ユダヤ系企業に投資。このせいで、いよいよ国内経済は停滞。おまけに、82年、この東欧投資バブルが崩壊。多くの銀行が破産し、庶民も財を失い、その始末は十年もかかった。

以前から、フランス外交官ゴビノーらが、アーリア人優位説を唱え、ワグナーやマルクスまで、ユダヤ人を、カネのみを求める劣等人種、と見なしており、事実としてユダヤ人たちがフランスの財を国外に持ち出して費やし、国内経済を混乱に陥れたことは、激しい嫌悪を掻き立てた。くわえて、フランス経済の起死回生策として79年に始まったパナマ運河プロジェクトも、92年に破綻。清算で、その債権は紙クズとなった。原因は、外地でのむちゃくちゃな放漫経営。長年、これを隠蔽するために、財務顧問でユダヤ人のレーナックとエルツは、クレマンソーら、大物政治家五百人以上に法外な賄賂を送り続けていた。だが、レーナックは自殺、エルツは英国へ逃亡し、真相はうやむや。ユダヤ憎悪はいよいよ高まった。

そんな中、1894年9月、駐仏ドイツ大使館にスパイとして送り込んでいた洗濯女が、ゴミ箱で破り捨てられた紙片を見つけ、持ち帰った。これを情報部が復元したところ、そこには、フランスの新しい「大砲」に関する情報が記されていた。そして、その筆跡から、砲兵士官のユダヤ系フランス人、ドレフュス大尉が内通者とされ、10月、反逆罪で逮捕。国内で反ユダヤの世論が一気に高まり、軍部が売国奴を庇っている、との批判が巻き起こる。このため、軍部は即決の軍法会議でドレフュスを終身刑とし、翌年1月には仏領ギアナの悪魔島監獄に送ってしまった。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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