米朝会談の意義と半島の行方:世界史文明論の視座から

2018.06.14

ライフ・ソーシャル

米朝会談の意義と半島の行方:世界史文明論の視座から

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/2015年7月、オバマ大統領がキューバと国交回復、17年1月就任したトランプ大統領は同年11月にヴェトナムを訪問、そして、今回の米朝会談。これらはいずれも冷戦の残滓の始末にすぎない。ミサイルやツィッターが大陸を越え、米国大統領が中ロの首脳と飛行機で直接に訪問し合う21世紀にあって、キューバも、ヴェトナムも、北朝鮮も、とっくに「前線」としての意味を失っていた。/

すでに米ロは深い親交があり、米中に関しても、単純に対立できる状況ではない。そもそも、産業が、19世紀の重厚長大から生活物資や電子電脳へシフトしており、海域はともかく、資源や労働力や市場、つまり「植民地」を奪い合って領土を拡大する意味がない。それどころか、不要過剰な移民の流入をシャットアウトすることの方に、どの国も腐心している。また、第二次大戦後のミサイルは、二次元的な「前線」の意味を失わせた。そんなものは中国やロシアも持っており、軽く米国まで届く。

つまり、北朝鮮は、資源と労働力と市場の「植民地」として、また、資本主義と共産主義の「冷戦前線」として、とっくの昔に存在基盤を失ってしまっている。にもかかわらず、「軍事独裁」という片軸だけで、自国そのものが冷戦残滓の反米の「前線」となることで、東欧諸国などより四半世紀以上も延命してきた。しかし、かつての盟主、中国やロシアからすれば、あんな過剰人口だらけの超貧困国など、移民吹き出す旧連邦諸国以下のお荷物でしかない。中ロの支援の目途が立たたない以上、陸の孤島。いくらミサイルがあっても、瞬殺の報復で終わる。つまり、戦略的には、実際に手を打ってみるまでもなく、もう詰んでいる。あとは、武装解除、全面降伏、せめて敗戦日本のように体制護持を願うのみというところか。

じつは、韓国に関しても同様で、冷戦前線の軍事独裁国としてやってきたが、北朝鮮が米国との対立を叫んでいたからこそ、二次元的な「前線」として存在意義があっただけで、北朝鮮がミサイル開発に乗り出した時点で、韓国もまた、もはや「前線」ではなくなってしまっていた。今後、北朝鮮がどうでもいい国になれば、韓国もまた、いよいよ、どうでもいい国、でしかなくなる。いずれにせよ、半島は、どちらも、米中ロが多大な犠牲、高額の軍事費を消耗し合ってまで奪い合うほどの価値が無い。二次元の地政学では、半島は、内陸と太平洋、東北と西南を繋ぐ極東の要衝であったかもしれないが、三次元の21世紀では、外交も、経済も、貿易も、頭の上を飛び越え、米国内陸中西部のようになるだろう。

核兵器が廃棄されるか。北朝鮮がどうであれ、中国やロシアのものは、どのみち今後もなくなりはしない。むしろ北朝鮮が廃棄を急いでいるのは、国内で管理体制に不安を生じているからではないか。あの国は、体制護持のため、党員貴族を本丸の平壌に集中させすぎた。だから、少数の「民主改革」派でも、平壌で核兵器を使えば、一発で体制を崩すことができてしまう。この問題は、解放改革に方針転換しても変わらない。縮減される北朝鮮軍部は、ロシアのように、政治性を失った利権暴力マフィアになるだろう。そして、もっともカネになる核兵器をテロリストに売ることを考えるだろう。これだけは、国際社会としてまずい。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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