事前期待とは(2) 【連載サービスサイエンス:第4回】

画像: Randy McRoberts

2015.08.20

経営・マネジメント

事前期待とは(2) 【連載サービスサイエンス:第4回】

松井 拓己
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

「サービスの定義」を理解することで浮かび上がってきた「事前期待」の重要性。とはいえ、「事前期待に応えよう」と言われても、きれいごとにしか聞こえないものです。「事前期待」とは一体どんなものなのかをロジカルに理解することで、事前期待を掴み、それに応えるための努力のポイントを明らかにしたいと思います。

お客様の事前期待に応えなければ、いくら頑張っても「サービス」とすら呼んでいただけない。このポイントを踏まえて今回は、事前期待に応えるための努力のポイントを明らかにしたいと思います。前回、評価の高いサービスを実現するためには、「事前期待」の中でも「事前期待の持ち方」の4つの種類に着目する必要があると分かりました。その4つとは、「共通的な事前期待」、「個別的な事前期待」、「状況で変化する事前期待」、「潜在的な事前期待」です。これらについて、順に見ていきたいと思います。


全てのお客様が共通的に持っている事前期待に応える意味

1つ目は、「共通的な事前期待」です。これは、すべてのお客様が共通的に持っている事前期待です。例えば、ホテルや旅館であれば、「宿泊するお部屋や水回りが清潔であってほしい」というのは、全てのお客様に共通的な事前期待だと思います。他にも、小売店や飲食店で「感じの良い接客をしてほしい」、ITサービスで「要求通りのシステムを納期までに納品してほしい」など。こういった「共通的な事前期待」には、抜かりなく確実に応えなければなりません。そこで、我々がすべき努力のポイントとしては、「マニュアル化」や「チェックリスト化」をして、拠点や時間帯、スタッフなどによってバラつかない均質なサービスを組織的に提供できるようにしておく必要があります。

しかし実は、この共通的な事前期待に応えるだけではお客様に喜んで頂くことはできません。なぜなら、共通的な事前期待に応えてもらったところで、お客様にとっては「当たり前」だからです。今の時代、失点しないサービスというだけで、お客様は喜んでくれません。お客様に喜んで頂き、選び続けて頂くためには、失点をしない努力だけでなく、得点を増やす努力をしなければならないのです。そこでカギを握るのが、残りの3つ(個別的な事前期待・状況で変化する事前期待・潜在的な事前期待)ということです。

そこで次に、「個別的な事前期待」の中身と、それに応えるための努力のポイントに触れてみたいと思います。


お客様ごとに期待が色々なのは当たり前

「個別的な事前期待」とは、お客様1人1人で異なる事前期待のことです。先ほどと同じくホテルを例にしてみると、「枕はそば殻で厚手のものでないと寝苦しい」「枕は羽毛で薄いものが好き」という様に、お客様ごとに異なる事前期待が該当します。

さて、この個別的な事前期待に応えるために有効な努力のポイントは何でしょうか?

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松井 拓己

松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。           代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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