シャープの「ロボホン」は、普及するのか?

画像: mohittzomar

 IT・エレクトロニクスの総合展示会「CEATEC JAPAN 2015」で鮮烈なデビューを果たしたシャープのロボット電話「ロボホン」が、2016年中とされている発売予定を前に大きな話題を呼んでいる。ぱっと見「かわいい!」「欲しい!」と思った人はいるようだが、本当に普及するのだろうか。そして、その普及の壁はどこになるのだろうか。

5万台というハードルを高いとみるかどうかだが、価格対も商材も全く違うが、2015年の今年、10年目にして高級車「レクサス」の累積販売台数が5万台を超えたことで話題になった。
同じく価格対が違うが、ハイテク製品という意味では、東京ガスの家庭用燃料電池「エネファーム」は5万台普及に6年間を要した。
時代が違うが同じロボットなら、今となっては懐かしいソニーの犬型ロボット「AIBO(アイボ)」の例が挙げられる。1999年に20万円弱で発売開始されて以来、徐々に値段を下げてファンの裾野を広げていったが2006年にソニーのロボット事業撤退を受けて生産を終えた。 7年間の累計販売台数は15万台であった。
恐らくコラム「ウェブワールド」の言う「5万台のハードル」は時間をかけて越えるのでは意味が無い。一気に販売して市場を盛り上げると共に、生産現場でも規模の経済を効かせて価格低減を図るという意味もあるのだろう。とすると、過去の事例から考えても簡単に越えられるハードルではなさそうだ。

■ユーザーとなるのはどんな人?
普及のカギをにぎるのは5万人がどういう人なのかが問題だ。「普及論」のE・M・ロジャースのいう、イノベーターだけだとコラムにある「コアなロボットファンだけでは1万台がせいぜい」ということになるのだろう。加えて、ロジャースはイノベーターを「冒険者」とも呼び、新しいモノにすぐ飛びつきはするが、その行動原理は専ら自らの探求心を充足させるために向いており、他者との関わりはあまり意識していない。つまり、伝播しないのである。ロジャースが指摘する次に市場で動く層は、アーリーアダプターだ。彼らは「目利き」であり、新しいモノの価値を吟味し、徹底評価したて採用する。その上で、未採用者に伝達するという行動もとる。そのため、ロジャースは「尊敬される人々」という呼び方もしている。尊敬するのは、新しいモノに比較的早く興味を持つ一般大衆であるアーリーマジョリティー(初期大衆)である。アーリーマジョリティーは、目利きであるアーリーアダプターの採用によって、「ああいう、判っている人が買ったなら安心だ」と採用を決める。故に、アーリーアダプターの採用により一般大衆に伝播するため、導入期から成長期に入って市場が一気に拡大するのだ。ロボホンにおいては、アーリーアダプター(目利き)からアーリーマジョリティー(初期大衆)に伝播する閾値が5万台なのだと解釈できる。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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