マクドナルドは復活するのか?~新興勢力と既存勢力攻勢~

画像: Shinichi Sugiyama

 ハンバーガー業界に次々と新興勢力が登場している。また、迎え撃つ既存勢力もふと気がつくと強大なリーダー企業・マクドナルドの迷走によって相対的にポジションが変化して優位なポジションを占めている。そうなってくると、一層厳しくなるのがマクドナルドの復活だ。

■バリュープロポジションで考えるマクドナルドの軌跡
 顧客にどのような魅力を打ち出し、競合と差別化を図るかを考えるポジショニング。その大元となる考え方を「バリュープロポジション」という。基本は価格に対して、どの程度の価値を提供するかという二軸で考える(図参照)。


  この図上で年代を分けて考えると各社の位置づけが判りやすい。本来のポジションはマクドナルドが業界標準の位置付けでもある「中価値戦略」である。新興勢力進出前は、モスバーガーとフレッシュネスバーガーが「プレミアム戦略」を採っていたということになるだろう。
 2005年原田社長就任後の立て直し時代以降、マクドナルドは100円メニューの拡充によって「エコノミー戦略」を取りつつ、一貫した値上げによってメニュー全体がプレミアムに寄って行こうとした。しかし、本来、業界標準・中価値ポジションであったマクドナルドが何か大きなリ・ポジショニングやリ・ブランディングなしに価格ポジションをジワジワと上げたことにより、消費者からは、価値はそのまま・価格が上昇=図上で右にシフトしたとみなされ、「プレミアム」ではなく「単なる値上げ」のポジションに入ったと認識されてしまったのだ。

■バリュープロポジションで考える、その他各社のポジション
 さて、今日の状況を冒頭の新興勢力をこの図に加えてみるとどうなるだろう。高価格だが顧客の満足度が高いシェイクシャックとベアバーガーは間違いなく「プレミアム戦略」のポジションである。それに比べると、モスバーガーとフレッシュネスバーガーは随分と庶民的な価格だ。「中価値戦略」のポジションに収まる。それに、本来そこを牙城としていたはずのマクドナルドは、前述の通り「エコノミー」と「単なる値上げ」のポジションであると消費者から認識されてしまっているので、そこはぽっかり空き地になっているのだ。加えて、「今まで高かったイメージがあったが実は高くなかった!」という消費者の認識からすると、低価格帯メニューは「グッドバリュー戦略」のポジションも併せて獲得できているかもしれない。
 価格と価値が正比例する関係を「バリューライン」と呼ぶ。言ってみれば、価格なりの品質を提供しているという、いわば当たり前なポジションだ。その意味では、「中価値」と同時に「グッドバリュー」のポジションを獲得しているモス、フレッシュネスは、マクドナルドの失策に乗じて一気に攻勢をかけるチャンスを活かしていると言えるだろう。さらに、バリューラインで見れば、ザ・サードバーガーが「高価値戦略」のポジションを明確に狙って来ていることがわかる。「マクドナルドと1000円超えバーガーの中間」を明言し、こだわりの味作り・モスとフレッシュネスの高価格帯の範囲と被っているため「価格は中程度・価値は高い=高価値戦略」のポジションにピッタリはまっているのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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